The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

February 7, 2008 Vol. 358 No. 6

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

メンケス病の新生児診断と治療
Neonatal Diagnosis and Treatment of Menkes Disease

S.G. Kaler and Others

背景

メンケス病は,銅輸送遺伝子 ATP7A の突然変異によって起こる,乳児における致死性の神経変性疾患である.早期に銅を投与することにより,死亡および疾患が予防できる可能性があるが,診断検査の感度と特異度が不十分であることから発症前の発見は困難となっている.われわれは,銅酵素であるドーパミン β ヒドロキシラーゼが欠損していることを利用して,血漿中神経化学物質濃度の診断的有用性の評価,早期発見の臨床効果の評価,治療転帰の分子的基盤の検討を前向きに行った.

方 法

1997 年 5 月~2005 年 7 月に,リスクのある乳児 81 例において,血漿中のドーパミン,ノルエピネフリン,ジヒドロキシフェニル酢酸,ジヒドロキシフェニルグリコールの濃度を測定した.適格基準を満たし,生後 22 日以内に銅補充療法を開始した 12 例の新生児を対象に,1.5~8 年にわたり生存および神経発達を経時的に追跡調査した.酵母を用いた相補性試験,逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)分析,免疫組織化学的分析を用いて,ATP7A の突然変異について検討を行った.

結 果

リスクのある乳児 81 例のうち,46 例でドーパミン β ヒドロキシラーゼ活性が低いことを示す神経化学的異常が認められた.経時的な追跡調査に基づき,患児をメンケス病であるか否かで分類したところ,神経化学的プロファイルは疾患の発見に対する感度と特異度が高いことが示された.スクリーニング検査陽性で早期に銅の投与を受けた 12 例の新生児では,中央値 4.6 年の追跡調査時の生存率は 92%であったのに対し,診断と治療が遅れた 15 例から成るヒストリカルコントロール群では,中央値 1.8 年の追跡調査時の生存率は 13%であった.12 例中 2 例では,神経発達および脳における髄鞘形成は正常であり,うち 1 例では Saccharomyces cerevisiae の銅輸送突然変異を相補する突然変異が認められ,部分的な ATPase 活性がみられた.もう 1 例では,ATP7A のスプライシングが正しく行われることを可能にする突然変異が認められた.

結 論

血漿中神経化学物質濃度の測定に基づきメンケス病を新生児期に診断し,早期に銅の投与を行うことで,臨床転帰が改善する可能性がある.ATP7A の機能が完全には失われない突然変異を有するメンケス病の新生児は,早期の銅投与に対してとくに反応する可能性がある.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00001262)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2008; 358 : 605 - 14. )