致死的な移植関連疾患のクラスターにおける新規アレナウイルス
A New Arenavirus in a Cluster of Fatal Transplant-Associated Diseases
G. Palacios and Others
同じ日に単一のドナーから臓器移植を受けた患者 3 例が,移植の 4~6 週後,熱性疾患のため死亡した.さまざまな感染性病原体について,培養,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析と血清学的検査,オリゴヌクレオチドマイクロアレイ分析を行ったが,情報は得られなかった.
肝移植および腎移植を受けたレシピエントから採取した RNA を評価した.ほかの方法では検出できない微生物の塩基配列を同定するため,バイアスのないハイスループット塩基配列決定法を用いた.新規候補病原体の特異な塩基配列を,培養と,PCR 分析・免疫組織化学的検査・血清学的検査により確認した.
ハイスループット塩基配列決定法により 103,632 の配列が検出され,このうち 14 は旧世界のアレナウイルスであった.配列をさらに分析したところ,この新規アレナウイルスはリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスと関連することが判明した.単一の配列に基づく特異的 PCR 分析により,レシピエントの腎臓,肝臓,血液,脳脊髄液にこのウイルスが存在することが確認された.免疫組織化学的検査では,レシピエントの移植肝と移植腎にアレナウイルス抗原が認められた.ドナーの血清中に,IgM および IgG 抗ウイルス抗体が検出された.レシピエント 1 例から 2 回採取された血清標本で,セロコンバージョンが認められた.
バイアスのないハイスループット塩基配列決定法は,病原体発見のための有力な手法である.疾患の発症時にこの方法を用いたことにより,臓器移植を介して伝播した新規アレナウイルスの同定が促進された.
本論文(10.1056/NEJMoa073785)は,2008 年 2 月 6 日に www.nejm.org で発表された.