The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

September 25, 2008 Vol. 359 No. 13

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

エゼチミブに関する 3 件の試験に基づく癌のデータの分析
Analyses of Cancer Data from Three Ezetimibe Trials

R. Peto and Others

背景

5 年間のスタチン療法により,低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールが大幅に低下し,その結果,5 年間にわたって心血管イベントの発生率が低下する.大動脈弁狭窄症に対するシンバスタチンとエゼチミブに関する試験(Simvastatin and Ezetimibe in Aortic Stenosis trial:SEAS)(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00092677)では,LDL コレステロールをさらに低下させることを目的としてスタチン療法にエゼチミブを併用すると,癌の発生率が上昇するという仮説が立てられている.

方 法

1,873 例の患者(エゼチミブまたはマッチさせたプラセボの投与開始後の平均追跡期間 4.1 年)を対象とした,エゼチミブ+シンバスタチンに関する SEAS 試験における癌の発生率についての仮説生成型の分析結果と,このレジメンに関する現在進行中の 2 件の大規模試験から得られた癌のデータについての仮説検証型の分析結果を比較した.2 件の試験は,9,264 例の患者(平均追跡期間 2.7 年)を対象とした心臓・腎臓保護試験(Study of Heart and Renal Protection:SHARP)(NCT00125593)と,現在 11,353 例の患者(平均追跡期間 1.0 年)が登録されているバイトリン(Vytorin)の有効性と転帰改善に関する多国間試験(Improved Reduction of Outcomes: Vytorin Efficacy International Trial:IMPROVE-IT)(NCT00202878)である.

結 果

SEAS 試験において,エゼチミブ群では,いくつかの部位の癌の新規発生数が多かった(実薬群 101 例 対 対照群 65 例).SHARP 試験と IMPROVE-IT 試験を合わせても,癌全体の発生数に超過はみられず(実薬群 313 例 対 対照群 326 例,リスク比 0.96,95%信頼区間 0.82~1.12,P=0.61),特定の部位での有意な超過もみられなかった.エゼチミブ群では,有意ではないものの癌による死亡が多かったが(97 例に対し対照群 72 例,P=0.07),同じく有意ではないが,死亡にいたっていない癌の症例は少なかった(216 例に対し対照群 254 例,P=0.08).癌の発生,癌による死亡のいずれのリスク比にも,追跡調査期間の延長に伴う傾向を示す所見は認められなかった.

結 論

これら 3 件の試験から得られる結果からは,エゼチミブが癌の発生率に及ぼす有害な影響についての確かなエビデンスは得られない.リスクと利益のバランスについてより信頼性の高い評価を行うには,より長期の追跡調査が必要である.

本論文(10.1056/NEJMsa0806603)は,2008 年 9 月 2 日に www.nejm.org で発表された.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2008; 359 : 1357 - 66. )