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July 10, 2008 Vol. 359 No. 2

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急性心原性肺水腫に対する非侵襲的換気療法
Noninvasive Ventilation in Acute Cardiogenic Pulmonary Edema

A. Gray and Others

背景

非侵襲的換気療法(持続気道陽圧療法 [continuous positive airway pressure:CPAP] と,非侵襲的間欠的陽圧換気療法 [noninvasive intermittent positive-pressure ventilation:NIPPV])は,急性心原性肺水腫の緊急治療に有効であると考えられ,死亡率を低下させる可能性がある.われわれは,非侵襲的換気療法によって死亡率を低下させられるかどうか,また治療法(CPAP,NIPPV)に関連した転帰に重大な差があるかどうかを明らかにする研究を行った.

方 法

多施設共同非盲検前向き無作為化比較試験で,患者を標準的な酸素療法群,CPAP 群(5~15 cmH2O),NIPPV 群(吸気圧 8~20 cmH2O,呼気圧 4~10 cmH2O)のいずれかに割り付けた.非侵襲的換気療法と標準的酸素療法の比較における主要エンドポイントは治療開始後 7 日以内の死亡とし,NIPPV と CPAP の比較における主要エンドポイントは 7 日以内の死亡または挿管とした.

結 果

計 1,069 例の患者(平均年齢 [±SD] 77.7±9.7 歳,女性 56.9%)を,標準的酸素療法(367 例),CPAP(346 例),NIPPV(356 例)に割り付けた.7 日間の死亡率には,標準的酸素療法群の患者(9.8%)と非侵襲的換気療法群の患者(9.5%)で有意差はなかった(P=0.87).7 日以内の死亡または挿管の複合エンドポイントは,非侵襲的換気療法を受けた 2 群の患者で有意差はなかった(CPAP で 11.7%,NIPPV で 11.1%,P=0.81).非侵襲的換気療法では,標準的酸素療法と比較して,治療開始後 1 時間で次の項目の平均値に大きな改善がみられた;患者の報告による呼吸困難(治療間の差,1~10 のビジュアルアナログスケールで 0.7;95%信頼区間 [CI] 0.2~1.3;P=0.008),心拍数(治療間の差,4 回/分;95% CI 1~6;P=0.004),アシドーシス(治療間の差,pH 0.03;95% CI 0.02~0.04;P<0.001),高炭酸ガス(治療間の差, 0.7 kPa [5.2 mmHg];95% CI 0.4~0.9;P<0.001).治療に関連した有害事象はなかった.

結 論

急性心原性肺水腫の患者では,非侵襲的換気療法により,標準的な酸素療法と比較して呼吸困難と代謝障害が迅速に改善するが,短期死亡率への影響はみられない.(Current Controlled Trials 番号:ISRCTN07448447)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2008; 359 : 142 - 51. )