October 30, 2008 Vol. 359 No. 18
発症直後の 1 型糖尿病における GAD 治療とインスリン分泌
GAD Treatment and Insulin Secretion in Recent-Onset Type 1 Diabetes
J. Ludvigsson and Others
グルタミン酸脱炭酸酵素(glutamic acid decarboxylase:GAD)65 kD アイソフォームは,1 型糖尿病患者に認められる主要な自己抗体である.この試験では,アルミアジュバント GAD(ミョウバン GAD)が発症直後の 1 型糖尿病を回復させられるかどうかを,年齢 10~18 歳の患者を対象に評価した.
空腹時 C ペプチド値が 0.1 nmol/L(0.3 ng/mL)を超え,GAD 自己抗体を有する 1 型糖尿病患者 70 例を診断後 18 ヵ月以内に登録し,試験 1 日目と 30 日目に,ミョウバン GAD 20 mg を皮下投与する群(35 例)と,プラセボ群(ミョウバンのみ投与,35 例)に無作為に割り付けた.1 日目と 3,9,15,21,30 ヵ月目の時点で,残存インスリン分泌能(C ペプチド値により評価)を刺激する混合食負荷試験を行った.ミョウバン GAD が免疫系に及ぼす作用についても検討した.
インスリン分泌能は両群とも低下した.試験治療は,15 ヵ月後の空腹時 C ペプチド値(主要エンドポイント)の変化に対し,有意な影響を及ぼさなかった.30 ヵ月間の空腹時 C ペプチド値のベースライン値からの低下は,ミョウバン GAD 群のほうがプラセボ群よりも有意に小さく(-0.21 nmol/L 対 -0.27 nmol/L [-0.62 ng/mL 対 -0.81 ng/mL],P=0.045),曲線下面積で評価した刺激分泌能も同様であった(2 時間あたり-0.72 nmol/L 対 -1.02 nmol/L [2 時間あたり-2.20 ng/mL 対 -3.08 ng/mL],P=0.04).診断後 6 ヵ月以上経過してからミョウバン GAD の投与を受けた患者では,防御効果は認められなかった.有害事象は軽度で,頻度は両群で同等とみられた.ミョウバン GAD の投与により,GAD の特異的免疫応答が誘発された.
ミョウバン GAD は,発症直後の 1 型糖尿病患者において,残存インスリン分泌能の維持に寄与する可能性があるが,インスリン必要量に変化はみられなかった.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00435981)
本論文(10.1056/NEJMoa0804328)は,2008 年 10 月 8 日に www.nejm.org で発表された.