December 25, 2008 Vol. 359 No. 26
1 型糖尿病とセリアック病に共通の遺伝子変異体と固有の遺伝子変異体
Shared and Distinct Genetic Variants in Type 1 Diabetes and Celiac Disease
D.J. Smyth and Others
1 型糖尿病とセリアック病の 2 つの炎症性疾患は集団内で同時に認められる場合があることから,共通の遺伝的起源を有することが示唆されている.いずれの疾患も染色体 6p21 上の HLA クラス II 遺伝子と関連しているため,われわれは HLA 以外にも共通して認められる遺伝子座があるかどうかを検討した.
1 型糖尿病患者 8,064 例,対照者 9,339 例,および患児とその実父母 3 人から成る 3,064 組の親子が含まれる 2,828 家族から得た DNA サンプルの遺伝子型決定と統計解析を行い,1 型糖尿病とセリアック病のリスクに関係する 8 個の遺伝子座との関連を評価した.また,セリアック病患者 2,560 例と対照者 9,339 例を対象に,1 型糖尿病と関連する 18 個の遺伝子座を検討した.
セリアック病の 3 つの遺伝子座である染色体 1q31 上の RGS1,染色体 2q12 上の IL18RAP,染色体 6q25 上の TAGAP は,1 型糖尿病と関連していた(P<1.00×10-4).染色体 3p21 上の 32 bp の挿入・欠失変異が 1 型糖尿病の遺伝子座として新たに同定されたが(P=1.81×10-8),これは染色体 18p11 上の PTPN2 と染色体 2q33 上の CTLA4 とともにセリアック病にも関連しており,共通の関連が認められた遺伝子座の総数は,染色体 12q24 上の SH2B3 を含め 7 個となった.IL18RAP と TAGAP の対立遺伝子により,1 型糖尿病には保護作用,セリアック病には感受性が付与された.これらの疾患に対し個別に影響する遺伝子座としては,1 型糖尿病では染色体 11p15 上の INS,染色体 10p15 上の IL2RA,染色体 1p13 上の PTPN22,セリアック病では染色体 3q25 上の IL12A,染色体 3q28 上の LPP があった.
1 型糖尿病とセリアック病に対する遺伝的感受性には,共通の対立遺伝子が存在する.これらのデータから,自己免疫と関連した組織損傷や食餌性抗原に対する不耐性のような共通の生物学的機序が,両疾患の病因論的特徴である可能性が示唆される.
本論文(10.1056/NEJMoa0807917)は,2008 年 12 月 10 日に www.nejm.org で発表された.