サソリ刺傷による神経毒性症状を呈する重症小児に対する抗毒素投与
Antivenom for Critically Ill Children with Neurotoxicity from Scorpion Stings
L.V. Boyer and Others
セントルロイデス属のサソリ Centruroides sculpturatus による臨床的に重大なサソリ毒中毒は,劇症の神経運動性の症候群と呼吸不全をもたらし,多くの場合積極的支持療法を要する.われわれは,サソリに特異的な F(ab')2 抗毒素が,この症候群を呈する小児の臨床症状を速やかに消失させるという仮説を立てた.
臨床的に重大なサソリ毒中毒の徴候を認め,小児集中治療室に入室した 6 ヵ月~18 歳の小児 15 例を対象に無作為化二重盲検試験を実施し,サソリに特異的な F(ab')2 抗毒素の有効性をプラセボと比較・検討した.主要エンドポイントは,試験薬投与後 4 時間以内の臨床症候群の消失とした.副次的エンドポイントは,鎮静のために併用したミダゾラムの総投与量,投与前後の血漿中毒物濃度の定量値などとした.
臨床症候群の消失は抗毒素群のほうがプラセボ群よりも速やかであり,抗毒素群では 8 例全例で投与後 4 時間以内に症状が消失したのに対し,プラセボ群では 7 例中 1 例であった(P=0.001).ミダゾラム投与量は,プラセボ群のほうが抗毒素群より多かった(平均累積投与量 4.61 mg/kg 対 0.07 mg/kg,P=0.01).投与後 1 時間で,血漿中毒物濃度が検出限界以下となったのは,抗毒素群では 8 例全例であったのに対し,プラセボ群では 1 例のみであった(P=0.001).
サソリ毒中毒による神経毒性の影響がみられる重症患児に対し,サソリに特異的な F(ab')2 抗毒素を静脈内投与することで,4 時間以内に臨床症候群が消失し,鎮静のためにミダゾラムを併用する必要性が減少した.また,毒物の血中非結合型濃度が低下した.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00685230)