ブタ由来新型インフルエンザ A(H1N1)ウイルスのヒトでの出現
Emergence of a Novel Swine-Origin Influenza A (H1N1) Virus in Humans
Novel Swine-Origin Influenza A (H1N1) Virus Investigation Team
2009 年 4 月 15 日と 4 月 17 日に,ブタ由来の新型インフルエンザ A(H1N1)ウイルス(swine-origin influenza A(H1N1)virus:S-OIV)が,米国の疫学的に関連のない 2 例の患者から採取された検体で同定された.メキシコ,カナダなどでも同一のウイルス株が同定された.米国で急速に拡大している集団発生で確認されたヒト S-OIV 感染の確定症例 642 例について報告する.
亜型の決定できなかったインフルエンザ A 型ウイルスのヒト感染に対し,米国で強化サーベイランスを開始した.検体を米国疾病対策予防センター(CDC)に送付し,リアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応による S-OIV の確定検査を行った.
4 月 15 日~5 月 5 日にかけて,米国の 41 州で計 642 例の S-OIV 感染が確認された.患者の年齢は 3 ヵ月~81 歳であり,60%は 18 歳以下であった.データが得られた患者のうち,18%は最近メキシコに渡航しており,16%は学校での S-OIV 集団感染であった.もっとも多くみられた症状は発熱(94%),咳嗽(92%),咽頭痛(66%)であり,下痢(25%),嘔吐(25%)も認められた.入院状況が判明している 399 例のうち,36 例(9%)は入院を要した.データが得られた 22 例の入院患者のうち,12 例は季節性インフルエンザの重症化リスクが高い患者背景を有しており,11 例は肺炎を呈し,8 例は集中治療室(ICU)への入室を要し,4 例は呼吸不全を呈し,2 例は死亡した.この S-OIV は,これまでに確認されたことのない独自のゲノム構成をもつことが明らかになった.
自然に治癒するものから重度のものまで,重症度の異なる熱性呼吸器感染症の集団発生の原因として,ブタ由来の新型インフルエンザ A ウイルスが同定された.実際の症例数は,この確定症例数よりも多い可能性が高い.
本論文(10.1056/NEJMoa0903810)は,NEJM.org で 2009 年 5 月 7 日に発表され,2009 年 5 月 22 日に更新された.