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September 10, 2009 Vol. 361 No. 11

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急性骨髄性白血病患者のゲノム配列決定で検出された共通する変異
Recurring Mutations Found by Sequencing an Acute Myeloid Leukemia Genome

E.R. Mardis and Others

背景

急性骨髄性白血病(AML)の病因に関連する DNA 変異のすべてはまだ明らかにされていない.

方 法

今回,超並列 DNA 塩基配列決定法(massively parallel DNA sequencing)を用いて,新たに未分化型急性骨髄性白血病(AML-M1)患者 1 例から採取した,細胞遺伝学的に正常な AML ゲノムと,マッチさせた正常な皮膚ゲノムに対し,包括度のきわめて高い(約 98%)配列決定を行った.追加的サンプルとして,AML 患者 187 例の配列決定も行った.

結 果

遺伝子のコード配列内に 12 個の後天性(体細胞)変異と,ゲノムの保存領域・制御領域内に 52 個の体細胞点変異を同定した.変異はすべてヘテロ接合型で,腫瘍サンプルのほぼすべての細胞に存在するとみられた.64 個の変異のうち 4 個は,調査した 188 例の AML サンプルのうち,追加的 AML サンプルの 1 例以上で認められた.NRAS 遺伝子と NPM1 遺伝子の変異はすでに AML 患者で同定されているが,ほかの 2 個の変異は同定されておらず,そのうちの 1 個は IDH1 遺伝子内にあり,調査した 187 例の追加的 AML ゲノムのうち 15 例で認められた.この変異は細胞遺伝学的に正常であることと強い関連がみられ,細胞遺伝学的に正常であった 80 例のサンプルのうち 13 例(16%)に存在していた.もう 1 個の変異は,高等哺乳動物の遺伝子の制御領域や保存領域における非遺伝子変異であり,1 例の 追加的AML 腫瘍サンプルで検出された.今回配列決定を行った AML ゲノムには約 750 個の点変異が存在したが,その中で AML の病因と関与するのはごく一部とみられる.

結 論

AML-M1 患者 1 例の腫瘍ゲノムと皮膚ゲノムを比較することにより,AML の病因に関与する可能性のある共通した変異が同定された.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2009; 361 : 1058 - 66. )