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July 2, 2009 Vol. 361 No. 1

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特発性膜性腎症の標的抗原としての M-Type ホスホリパーゼ A2 受容体
M-Type Phospholipase A2 Receptor as Target Antigen in Idiopathic Membranous Nephropathy

L.H. Beck, Jr., and Others

背景

特発性膜性腎症はネフローゼ症候群でよくみられる病態の 1 つで,抗体媒介性の自己免疫性糸球体疾患である.標的抗原が不明であるため,その血清学的診断は困難である.

方 法

特発性/二次性膜性腎症患者,その他蛋白尿を伴う疾患や自己免疫疾患を有する患者から採取した血清検体と,健常対照者から採取した血清検体を用いて,正常ヒト糸球体蛋白を抽出しウェスタンブロッティングを行った.質量分析法を用いて反応を示した蛋白バンドの解析を行い,単一特異性抗体を用いてその標的抗原の同定と局在を確認した.

結 果

特発性膜性腎症患者 37 例中 26 例(70%)の血清検体において,非還元条件下で解析した糸球体抽出物中に 185 kD の糖蛋白が特異的に同定されたが,二次性膜性腎症患者の血清検体では同定されなかった.反応を示した蛋白バンドの質量分析により,M-type ホスホリパーゼ A2 受容体(PLA2R)が検出された.反応を示した血清検体は組換え型 PLA2R を認識し,抗 PLA2R 単一特異性抗体が結合したものと同じ 185 kD の糸球体蛋白と結合した.膜性腎症患者から採取した血清検体中の抗 PLA2R 自己抗体の大部分は,糸球体沈着物中に優勢な免疫グロブリンサブクラスである,IgG4 であった.PLA2R は正常ヒト糸球体上皮細胞(ポドサイト)でみられ,膜性腎症患者の糸球体中の免疫沈着物中では IgG4 と共局在化していた.特発性膜性腎症患者の免疫沈着物から抽出した IgG は PLA2R を認識したが,ループス膜性腎症患者や IgA 腎症患者の沈着物から抽出した IgG は認識しなかった.

結 論

特発性膜性腎症患者の大半は,PLA2R 中の立体構造依存性エピトープに対する抗体を有している.PLA2R は,正常ヒト糸球体ポドサイト中と,特発性膜性腎症患者の免疫沈着物中にみられることから,特発性膜性腎症の主要な抗原であることが示唆される.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2009; 361 : 11 - 21. )