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November 19, 2009 Vol. 361 No. 21

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炎症性腸疾患とインターロイキン-10 受容体に影響を及ぼす遺伝子変異
Inflammatory Bowel Disease and Mutations Affecting the Interleukin-10 Receptor

E.-O. Glocker and Others

背景

炎症性腸疾患の分子レベルでの原因はほとんど明らかになっていない.

方 法

早発性炎症性腸疾患の患児がいる,血縁関係のない 2 家族から生検標本を採取し,遺伝子連鎖解析と候補遺伝子の配列決定を行った.さらに,早発性大腸炎の患児 6 例で 2 つの候補遺伝子における変異を検索し,末梢血単核球の機能解析を行った.1 例に同種造血幹細胞移植を行った.

結 果

患児 9 例中 4 例で,ヘテロ 4 量体を形成してインターロイキン-10 受容体(IL10R)を構成する IL10R1,IL10R2 蛋白をコードする遺伝子 IL10RAIL10RB に,3 つの異なるホモ接合性変異を同定した.これらの変異により,インターロイキン-10(IL-10)を介したシグナル伝達,すなわち IL-10 の刺激による STAT3(シグナル伝達性転写因子 3)のリン酸化が阻害された.この所見に一致して,IL10R サブユニット蛋白が欠損した患児では末梢血単核球の腫瘍壊死因子 α やその他の炎症性サイトカインの分泌が亢進しており,これらの細胞で IL-10 依存性の「負のフィードバック」制御が破綻していることが示唆された.1 例に行った同種造血幹細胞移植は奏効した.

結 論

腸の過剰な炎症性免疫応答を伴う早発性腸炎の患児において,IL10R サブユニット蛋白をコードする遺伝子に変異が認められた.同種造血幹細胞移植を行った 1 例では寛解が得られた.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2009; 361 : 2033 - 45. )