November 26, 2009 Vol. 361 No. 22
B リンパ球消失とβ細胞機能の維持におけるリツキシマブの効果
Rituximab, B-Lymphocyte Depletion, and Preservation of Beta-Cell Function
M.D. Pescovitz and Others
1 型糖尿病の免疫学的発症機序は T リンパ球性自己免疫と関連している.しかし,T リンパ球が介在する多くの疾患には,B リンパ球が関与しているというエビデンスが増えている.抗 CD20 モノクローナル抗体リツキシマブは,B リンパ球を選択的に消失させることが可能である.この第 2 相試験では,1 型糖尿病患者で B リンパ球が消失することの意義を検討した.
無作為化二重盲検試験において,新たに 1 型糖尿病と診断された 8~40 歳の患者 87 例を,試験の 1 日目,8 日目,15 日目,22 日目にリツキシマブを投与する群と,プラセボを投与する群のいずれかに割り付けた.主要転帰は,初回投与から 1 年後に評価した,混合食負荷試験開始から 2 時間の血清 C ペプチド値曲線下面積(AUC)の幾何平均とした.副次的転帰は,安全性,糖化ヘモグロビン(HbA1c)値の変化,インスリン投与量の変化などとした.
1 年後,C ペプチド値の平均 AUC は,リツキシマブ群のほうがプラセボ群より有意に高かった.また,リツキシマブ群では HbA1c 値が有意に低く,インスリン投与量が少なかった.3~12 ヵ月のあいだは,C ペプチド値の低下率は,リツキシマブ群のほうがプラセボ群より有意に小さかった.CD19+B リンパ球はリツキシマブ群において消失したが,12 ヵ月後にはベースライン値の 69%まで増加した.有害事象はリツキシマブ群でプラセボ群より多く発現し,そのほとんどがグレード 1 または 2 で初回投与後に発現した.2 回目以降の投与に対する反応は,最小限度のものとみられた.リツキシマブ群における感染症や好中球減少の増加は認められなかった.
1 型糖尿病患者にリツキシマブの投与を 1 サイクル(4 回)行うことでβ細胞の機能が 1 年間,部分的に維持された.B リンパ球が 1 型糖尿病の病因に関与するというこの知見によって,1 型糖尿病患者の治療に新たな道がひらかれる可能性がある.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00279305)