December 10, 2009 Vol. 361 No. 24
鎌状赤血球症に対する同種造血幹細胞移植
Allogeneic Hematopoietic Stem-Cell Transplantation for Sickle Cell Disease
M.M. Hsieh and Others
骨髄破壊的同種造血幹細胞移植は鎌状赤血球症の小児に有効であるが,成人には毒性が強い.移植片拒絶反応と移植片対宿主病(GVHD)もまた,治療の妨げとなる.われわれは鎌状赤血球症の成人に骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植を行った.
重症鎌状赤血球症の成人(16~45 歳)10 例に対し,顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)で動員した HLA 一致同胞の CD34+ 末梢血幹細胞を,骨髄非破壊的前処置を用いて移植した.移植前に 300 cGy の全身照射,アレムツズマブ(alemtuzumab)投与を行い,続いてシロリムス(sirolimus)投与を開始した.
移植後の追跡期間中央値 30 ヵ月(15~54 ヵ月)の時点で,10 例全例が生存していた.9 例では,ドナーリンパ球・造血細胞の生着が長期間安定しており,鎌状赤血球症の表現型の逆転に足るレベルであった.移植細胞の生着に成功したこの 9 例では,ドナー–レシピエントキメリズムの平均値(±SE)は,T 細胞(CD3+) 53.3±8.6%,骨髄細胞(CD14+15+)83.3±10.3%であった.ヘモグロビン値は,移植前 9.0±0.3 g/dL,最終追跡評価時 12.6±0.5 g/dL であった.重篤な有害事象として麻薬離脱症状や,シロリムスに関連した間質性肺炎,関節痛などがみられた.いずれの患者にも急性および慢性の GVHD の発現は認められなかった.
全身照射とアレムツズマブ,シロリムス投与を行う骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植プロトコールによって,安定したドナー–レシピエントキメリズムが得られ,鎌状赤血球症の表現型を逆転させることができる.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00061568)