December 24, 2009 Vol. 361 No. 26
心電図上の早期再分極に関連した長期転帰
Long-Term Outcome Associated with Early Repolarization on Electrocardiography
J.T. Tikkanen and Others
早期再分極は,12 誘導心電図で V1~V3 以外の誘導でみられる QRS–ST 接合部(J 点)の上昇を特徴とし,心室細動の易発現性に関連しているが,この心電図パターンが一般集団においてもつ予後的意義はほとんど知られていない.
中年(平均 [±SD] 年齢 44±8 歳)住民 10,864 例から成る地域ベースの一般集団を対象に,12 誘導心電図で認められた早期再分極の有病率と予後的意義を評価した.主要エンドポイントは平均追跡期間 30±11 年における心臓を原因とする死亡とし,副次的エンドポイントはあらゆる原因による死亡と不整脈による死亡とした.早期再分極は,下壁誘導,側壁誘導のいずれかにおける J 点の上昇度(0.1 mV 以上または 0.2 mV 超)により分類した.
0.1 mV 以上の早期再分極パターンは計 630 例(5.8%)で認められた.下壁誘導 384 例(3.5%),側壁誘導 262 例(2.4%)で,うち 16 例(0.1%)は両誘導で認められた.下壁誘導において,0.1 mV 以上の J 点上昇は心臓を原因とする死亡リスクの上昇と関連していた(補正相対リスク 1.28,95%信頼区間 [CI] 1.04~1.59,P=0.03).0.2 mV 超の J 点上昇が認められた 36 例(0.3%)では,心臓を原因とするリスク(補正相対リスク 2.98,95% CI 1.85~4.92,P<0.001)も,不整脈による死亡リスク(補正相対リスク 2.92,95% CI 1.45~5.89,P=0.01)も,顕著に上昇した.その他の心電図におけるリスクマーカー,たとえば心拍数で補正した QT 延長(P=0.03)や左室肥大(P=0.004)は,主要エンドポイントの予測因子としては弱 かった.
中年者において,標準心電図の下壁誘導における早期再分極パターンは,心臓を原因とする死亡リスクの上昇に関連している.