September 3, 2009 Vol. 361 No. 10
肺癌における上皮成長因子受容体変異のスクリーニング
Screening for Epidermal Growth Factor Receptor Mutations in Lung Cancer
R. Rosell and Others
進行非小細胞肺癌患者では,上皮成長因子受容体遺伝子(EGFR)の活性化変異により,チロシンキナーゼ阻害薬であるゲフィチニブとエルロチニブに対する過敏症が起こる.このような患者における EGFR 変異の大規模スクリーニングの実施可能性を評価し,変異とエルロチニブ治療の転帰との関連を分析した.
2005 年 4 月~2008 年 11 月に,スペインの 129 施設,2,105 例の患者の肺癌について,EGFR 変異のスクリーニングを行った.解析は中央検査室で行った.EGFR 変異を有する患者をエルロチニブ治療に適格とした.
2,105 例中 350 例(16.6%)で EGFR 変異が検出された.変異がみられた頻度は,女性(69.7%),喫煙歴のない患者(66.6%),腺癌患者(80.9%)で高かった(すべての比較について P<0.001).変異は,エクソン 19 の欠失(62.2%)と L858R の変異(37.8%)であった.エルロチニブの投与を受けた 217 例の無増悪生存期間中央値は 14 ヵ月,全生存期間中央値は 27 ヵ月であった.無増悪生存期間についての補正ハザード比は,男性で 2.94(P<0.001),L858R の変異が存在する場合はエクソン 19 の欠失が存在する場合との比較で 1.92(P=0.02),ペア血清中の DNA に L858R の変異が存在する場合は変異が存在しない場合との比較で 1.68(P=0.02)であった.高頻度にみられた有害事象は軽度の発疹と下痢であり,グレード 3 の皮膚毒性が 16 例(7.4%)に,グレード 3 の下痢が 8 例(3.7%)に認められた.
肺癌患者における EGFR 変異の大規模スクリーニングは実施可能であり,治療に関する意思決定に役立つ可能性がある.