March 18, 2010 Vol. 362 No. 11
幼児血管腫由来幹細胞でのコルチコステロイドによる VEGF-A の抑制
Corticosteroid Suppression of VEGF-A in Infantile Hemangioma-Derived Stem Cells
S. Greenberger and Others
コルチコステロイドは幼児血管腫の治療に広く用いられているが,その作用機序は明らかにされていない.既報の幼児血管腫 in vivo モデルと血管腫由来培養細胞を用いて,コルチコステロイドの効果を検討した.
血管腫由来幹細胞を免疫不全(ヌード)マウスに移植し,in vivo での血管新生作用を調査した.移植前の細胞と移植後のマウスの両方に対するデキサメタゾン投与について検討した.また,血管腫由来幹細胞における in vitro での血管内皮増殖因子 A(VEGF-A)の発現を調査し,in vivo と in vitro で短鎖ヘアピン RNA(short hairpin RNA:shRNA)を用いて VEGF-A の発現阻害を検討した.
マウスモデルにデキサメタゾンを全身投与すると,腫瘍血管新生が用量依存的に阻害された.in vitro で血管腫由来幹細胞を移植前にデキサメタゾンで前処理した場合でも,血管新生が阻害された.デキサメタゾンにより,in vitro での血管腫由来幹細胞からの VEGF-A 産生は抑制されたが,血管腫由来内皮細胞やヒト臍帯静脈内皮細胞からの VEGF-A 産生は抑制されなかった.血管腫由来幹細胞内で VEGF-A をサイレンシングすると,in vivo での血管新生が抑制された.VEGF-A は増殖期の血管腫検体中に検出されたが,退縮期には検出されず,また免疫染色により血管外部に存在することが示された.コルチコステロイド投与により,ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体,インターロイキン-6,単球走化性蛋白 1,マトリクスメタロプロテイナーゼ 1 など,血管腫由来幹細胞内のその他の血管新生促進因子は抑制された.
マウスモデルでは,デキサメタゾンによりヒト幼児血管腫由来の幹細胞の血管新生能が阻害された.また in vivo では,コルチコステロイドにより血管腫由来幹細胞による VEGF-A の発現が阻害され,これらの細胞内で VEGF-A 発現をサイレンシングすると血管新生が阻害された.