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May 6, 2010 Vol. 362 No. 18

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投薬の安全性に対するバーコード技術の効果
Effect of Bar-Code Technology on the Safety of Medication Administration

E.G. Poon and Others

背景

病院内での重大な投薬過誤は高頻度にみられ,処方オーダーの転記時や投薬時に起こることが多い.このような過誤を防止するために,電子投薬システムにバーコード検証技術を組み込んだ,投薬検証技術(バーコード eMAR)が開発された.

方 法

バーコード eMAR を導入している大学病院で,前後比較による準実験的研究を行った.バーコード eMAR を導入している診療科と導入していない診療科とで,処方オーダーの転記時と投薬時の過誤率を評価した.投薬の遅早に関連する過誤は「タイミング過誤」として分類し,その他の過誤はすべて「非タイミング過誤」とした.2 人の医師が過誤を検証し,患者に有害な影響を及ぼす可能性の有無を判定して,害を及ぼす可能性のあるものは「潜在的有害薬物イベント」として分類した.

結 果

14,041 件の投薬について観察し,3,082 件の処方オーダーの転記について検討した.投薬時の非タイミング過誤は,バーコード eMAR を導入していない診療科で 776 件(過誤率 11.5%)あり,バーコード eMAR を導入している診療科では 495 件(過誤率 6.8%)あり,過誤の相対減少率は 41.4%であった(P<0.001).潜在的有害薬物イベント(タイミング過誤に関連するもの以外)の発生率は,バーコード eMAR を導入していない診療科では 3.1%であったのに対し,導入している診療科では 1.6%まで減少し,相対減少率は 50.8%であった.投薬時のタイミング過誤率は,27.3%減少したが(P<0.001),タイミング過誤に関連する潜在的有害薬物イベントの発生率の変化は有意ではなかった.転記過誤は,バーコード eMAR を導入していない診療科の 6.1%で発生したが,導入している診療科では完全に排除された.

結 論

バーコード eMAR により,処方オーダーの転記時と投薬時の過誤,潜在的有害薬物イベントの発生は大幅に減少した.今回の結果から,バーコード eMAR は,投薬の安全性を改善するための重要な手段であることが示される.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00243373)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2010; 362 : 1698 - 707. )