February 18, 2010 Vol. 362 No. 7
意識障害時の意志による脳活動の変化
Willful Modulation of Brain Activity in Disorders of Consciousness
M.M. Monti and Others
意識障害の鑑別診断はむずかしく,誤診率は約 40%である.ベッドサイド検査を補うための新たな方法が,とくに,患者が気づき(awareness)の徴候を行動で示すことができない場合には必要である.
英国のケンブリッジとベルギーのリエージュにある 2 つの主要な高次施設で,意識障害患者 54 例を対象に試験を行った.機能的 MRI を用いて,2 つの確立された心的イメージタスク中に,患者の意志で神経解剖学部位に血中酸素濃度依存的反応を発生させられるかどうかを評価した.次いで,このようなタスクを用いて考案した,簡単な質問に「Yes」または「No」で回答を伝達する方法についてその実行可能性を検証した.
この試験に登録した 54 例のうち,5 例は意志により脳活動を変化させることができた.この 5 例のうち 3 例では追加のベッドサイド検査で気づきの徴候がいくらか認められたが,残りの 2 例では自発的行動を確認することはできなかった.1 例は今回考案した方法により機能的 MRI 中に「Yes」または「No」による回答が可能であったが,ベッドサイドではいかなる形態の意思疎通も不可能なままであった.
今回の結果から,植物状態や最小意識状態の患者のごく一部では,気づきと認知を反映した脳の活性化がみられることが示された.これらの患者の中には,注意深い臨床検査により意識状態の分類が変わる者もいると考えられる.今回考案した方法は,行動による反応がみられない患者との基本的な意思の疎通に有用である可能性がある.