October 7, 2010 Vol. 363 No. 15
急性心不全に対するアデノシン A1−受容体拮抗薬ロロフィリン
Rolofylline, an Adenosine A1−Receptor Antagonist, in Acute Heart Failure
B.M. Massie and Others
急性心不全患者では腎機能が低下することが多く,その場合,転帰不良と関連する.実験的研究や臨床研究からは,アデノシンを介して生じる対抗制御応答が関与している可能性が示唆されている.われわれは,急性心不全患者にアデノシン A1−受容体拮抗薬ロロフィリン(rolofylline)を使用することで,呼吸困難が改善し,腎機能低下のリスクが減少し,より良好な臨床経過をたどるという仮説を検証した.
急性心不全により入院した,腎機能障害を有する患者を対象に,多施設共同二重盲検プラセボ対照試験を実施した.2,033 例の患者を,診察後 24 時間以内に,1 日 1 回ロロフィリン(30 mg)を静脈内投与する群とプラセボを投与する群のいずれかに 2:1 の割合で無作為に割り付け,最長 3 日間投与した.主要エンドポイントは,治療成功,治療不成功,変化なしとした.このエンドポイントは,生存,心不全の状態,腎機能の変化に基づいて定義した.副次的エンドポイントは,治療後に発現した持続性の腎機能障害と,60 日間における死亡ないし心血管系/腎臓の原因による再入院の発生率とした.
ロロフィリンには,プラセボと比較して,主要エンドポイントに関する有益性は認められなかった(オッズ比 0.92,95%信頼区間 0.78~1.09,P=0.35).持続性の腎機能障害は,ロロフィリン群の 15.0%,プラセボ群の 13.7%に発現した(P=0.44).60 日目までの死亡または心血管系/腎臓の原因による再入院の割合は,ロロフィリン群とプラセボ群で同程度であった(それぞれ 30.7%と 31.9%,P=0.86).全体の有害事象発生率は同程度であったが,ロロフィリン群にのみ,A1−受容体拮抗薬により生じうる有害作用である痙攣がみられた.
主要臨床複合エンドポイントに関してロロフィリンに有益な効果は認められず,腎機能にも 60 日転帰にも改善は認められなかった.ロロフィリンは,腎機能障害を伴う急性心不全の治療法として有望ではない.(Merck 社の子会社である NovaCardia 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00328692,NCT00354458)