October 21, 2010 Vol. 363 No. 17
手術不適応の大動脈弁狭窄症患者に対する経カテーテル大動脈弁留置術
Transcatheter Aortic-Valve Implantation for Aortic Stenosis in
M.B. Leon and Others
重症大動脈弁狭窄症で合併症を有する多くの患者は,大動脈弁置換術の適応とならない.最近では,高リスクの大動脈弁狭窄症患者に対するより低侵襲の治療法として,経カテーテル大動脈弁留置術(transcatheter aortic-valve implantation:TAVI)が提案されている.
手術不適応と外科医に判断された重症大動脈弁狭窄症患者を,標準治療(バルーン大動脈弁形成術など)を行う群と,バルーン拡張型ウシ心膜弁を経大腿的・経カテーテル的に留置する群(TAVI 群)に無作為に割り付けた.主要エンドポイントは全死因死亡率とした.
21 施設(米国内 17 施設)で,手術不適応と判断された大動脈弁狭窄症患者 358 例を無作為化した.1 年の時点での全死因死亡率(Kaplan–Meier 解析)は,TAVI 群 30.7%に対し,標準治療群 50.7%であった(TAVI 群のハザード比 0.55,95%信頼区間 [CI] 0.40~0.74,P<0.001).全死因死亡または再入院の複合エンドポイントの発生率は,TAVI 群 42.5%に対し,標準治療群 71.6%であった(ハザード比 0.46,95% CI 0.35~0.59,P<0.001).1 年の時点での生存患者において,心症状(ニューヨーク心臓協会 [NYHA] 分類で III 度または IV 度)の発生率は,TAVI 群のほうが標準治療群より低かった(25.2% 対 58.0%,P<0.001).30 日の時点では,TAVI は標準治療と比較して,重度脳卒中(5.0% 対 1.1%,P=0.06)と主要血管合併症(16.2% 対 1.1%,P<0.001)の高い発生率に関連していた.TAVI 施行後の 1 年間で,心エコー図での狭窄・逆流所見により評価した生体弁の機能に低下は認められなかった.
手術不適応の重症大動脈弁狭窄症患者に TAVI を施行した場合には,標準治療を行った場合に比べ,重度脳卒中と主要血管イベントの発生率はより高かったが,全死因死亡,全死因死亡または再入院の複合エンドポイント,心症状の発生率は有意に低下した.(Edwards Lifesciences 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00530894)