October 28, 2010 Vol. 363 No. 18
CYP2C19 の遺伝子型がクロピドグレル治療の転帰に及ぼす影響
Effects of CYP2C19 Genotype on Outcomes of Clopidogrel Treatment
G. Paré and Others
クロピドグレルによる心血管イベントの発生率を低下させる効果は,CYP2C19 の機能喪失型対立遺伝子の保有者において減弱する可能性が示唆されている.これらの機能喪失型対立遺伝子は,クロピドグレルの活性代謝物への変換の減少に関連している.
急性冠症候群患者,心房細動患者でクロピドグレルによりプラセボと比べて心血管イベントの発生率(有効性の主要転帰)が低下することが示された 2 件の大規模無作為化試験の患者を対象に,遺伝子型決定を行った.CYP2C19 の主要な対立遺伝子を規定する 3 つの一塩基多型(★2,★3,★17)について,患者の遺伝子型を決定した.
遺伝子型決定を行った急性冠症候群患者 5,059 例では,遺伝的に決定している代謝能の表現型にかかわらず,クロピドグレル群のほうがプラセボ群よりも有効性の主要転帰の発生率が有意に低かった(不均一性について P=0.12).クロピドグレルの有効性の主要転帰の発生率を低下させる効果は,機能喪失型対立遺伝子のヘテロ接合またはホモ接合の保有者とその対立遺伝子の非保有者とで同程度であった(保有者における発生率 8.0% [クロピドグレル群] 対 11.6% [プラセボ群],クロピドグレル群のハザード比 0.69,95%信頼区間 [CI] 0.49~0.98;非保有者における発生率 9.5% 対 13.0%,ハザード比 0.72,95% CI 0.59~0.87).これに対し,機能獲得型対立遺伝子の保有者では,非保有者に比べて,クロピドグレルによりプラセボと比較してより大きな利益が得られた(保有者における主要転帰の発生率 7.7% 対 13.0%,ハザード比 0.55,95% CI 0.42~0.73;非保有者における発生率 10.0% 対 12.2%,ハザード比 0.85,95% CI 0.68~1.05;交互作用について P=0.02).出血に関するクロピドグレルの影響には,遺伝子型によるサブグループで差はみられなかった.遺伝子型決定を行った心房細動患者 1,156 例では,有効性と出血のいずれに関しても,治療割付けと,代謝能の表現型,機能喪失型対立遺伝子の保有状態,機能獲得型対立遺伝子の保有状態とのあいだの交互作用を示す知見は認められなかった.
急性冠症候群患者,心房細動患者では,CYP2C19 の機能喪失型対立遺伝子の保有状態にかかわらず,プラセボと比較したクロピドグレルの効果が一貫していた.(Sanofi-Aventis 社,Bristol-Myers Squibb 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00249873)