November 4, 2010 Vol. 363 No. 19
償還政策と前立腺癌に対するアンドロゲン抑制療法
Reimbursement Policy and Androgen-Deprivation Therapy for Prostate Cancer
V.B. Shahinian, Y.-F. Kuo, and S.M. Gilbert
メディケア近代化法(Medicare Modernization Act)により,2004 年から前立腺癌に対するアンドロゲン抑制療法(ADT)費用の償還はわずかに引き下げられ,その後 2005 年に大幅に変更された.われわれは,エビデンスに基づかない適応に対する ADT の施行件数が,これらの引き下げによって減少するという仮説を立てた.
メディケアのサーベイランス・疫学・最終結果(Surveillance, Epidemiology, and End Results:SEER)データベースを用いて,2003~05 年に新規前立腺癌と診断された男性 54,925 例を同定した.ADT の必要性に応じて,これらの男性を次の 3 群に分類した;軽度~中等度の悪性度の限局性腫瘍を有する男性(ADT により生存上の利益が得られる可能性が低い)に対する一次治療は「不適切群」,局所進行癌を有する男性(ADT による生存上の利益が確立されている)に対する放射線治療と併用した補助療法は「適切」群,高悪性度の限局性腫瘍に対する一次治療または補助療法を受けている男性に対する施行は「任意」群.各群で,診断を受けた年ごとに ADT を受けた男性の割合を算出した.修正ポアソン回帰モデルを用いて,診断を受けた年が ADT の施行に及ぼす影響を算出した.
この研究の対象期間中に,不適切な ADT が施行された割合は,2003 年の 38.7%から,2004 年には 30.6%に,2005 年には 25.7%にまで大幅に減少した(2003 年と比較した 2005 年の ADT の施行のオッズ比 0.72,95%信頼区間 [CI] 0.65~0.79).補助療法としての ADT の適切な施行に減少は認められなかった(オッズ比 1.01,95% CI 0.86~1.19).任意群では,2005 年に施行の有意な減少が認められたが,2004 年には認められなかった.
2004 年と 2005 年のメディケアの償還政策の変更に伴い ADT の施行は減少し,とくに ADT による利益が明確ではない男性に対する施行が減少した.(米国対がん協会から研究助成を受けた.)