November 11, 2010 Vol. 363 No. 20
乳児期の食事介入とβ細胞自己免疫への影響
Dietary Intervention in Infancy and Later Signs of Beta-Cell Autoimmunity
M. Knip and Others
遺伝的感受性を有する小児では,複合的な食物蛋白への早期曝露によりβ細胞自己免疫と 1 型糖尿病のリスクが高まる可能性がある.われわれは,高度に加水分解した調整粉乳で母乳を補うことによって,そのような小児における糖尿病関連自己抗体の累積発生率が低下するという仮説を検証した.
二重盲検無作為化試験において,HLA により 1 型糖尿病感受性が判別された乳児で,家族に 1 型糖尿病患者が 1 人以上いる 230 例を,生後 6~8 ヵ月の期間で母乳が与えられない際に,カゼイン加水分解乳を与える群,または従来の調整粉乳を与える群(対照群)のいずれかに割り付けた.中央値 10 年(平均 7.5 年)の観察期間に,インスリン,グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD),インスリノーマ関連蛋白 2 分子(IA-2),亜鉛トランスポーター 8 に対する自己抗体を,ラジオバインディングアッセイによって解析し,膵島細胞抗体を免疫蛍光法によって解析した.児が 10 歳になるまで,1 型糖尿病の発症について観察した.
カゼイン加水分解乳群において,1 つ以上の自己抗体が陽性となる未補正のハザード比は,対照群との比較で 0.54(95%信頼区間 [CI] 0.29~0.95),試験用の調整粉乳への曝露期間に認められた差で補正後のハザード比は 0.51(95% CI 0.28~0.91)であった.2 つ以上の自己抗体が陽性となる未補正のハザード比は 0.52(95% CI 0.21~1.17),補正後のハザード比は 0.47(95% CI 0.19~1.07)であった.報告された有害事象の発現率は,2 群で同程度であった.
乳児期の食事介入は,β細胞自己免疫のマーカー,すなわち 1 型糖尿病につながる自己免疫過程を反映している可能性のあるマーカーに,長期的な影響を及ぼすと考えられる.(欧州委員会ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00570102)