November 11, 2010 Vol. 363 No. 20
包括的な手術安全性向上システムが患者の転帰に及ぼす効果
Effect of a Comprehensive Surgical Safety System on Patient Outcomes
E.N. de Vries and Others
手術を受けた患者に起こる有害事象は,医原性疾患の大部分を占める.手術安全性確保のための介入のほとんどは,手術室を中心としたものである.医療過誤は全体の半数以上が手術室の外で起きていることから,手術に関わる過程全体を標的とすることで転帰のより大幅な改善が得られる可能性がある.
投薬,術側へのマーキング,術後指導の実施などの項目を含む,包括的かつ集学的な手術安全性チェックリストの使用が患者の転帰に及ぼす効果を検討した.診療水準の高い 6 病院でこのチェックリストを導入した.入院中に発生したすべての合併症を前向きに記録した.ベースラインの 3 ヵ月間とチェックリスト導入後の 3 ヵ月間とで,潜在的交絡因子を考慮しながら合併症発生率を比較した.5 病院を対照群とし,同様のデータを収集した.
チェックリスト導入前に観察した 3,760 例と導入後に観察した 3,820 例との比較で,100 例あたりの合併症の総発生件数は 27.3 件(95%信頼区間 [CI] 25.9~28.7)から 16.7 件(95% CI 15.6~17.9)に減少し,絶対リスク減少は 10.6 件(95% CI 8.7~12.4)であった.1 件以上の合併症がみられた患者の割合は 15.4%から 10.6%に低下した(P<0.001).院内死亡率は 1.5%(95% CI 1.2~2.0)から 0.8%(95% CI 0.6~1.1)に低下し,絶対リスク減少は 0.7 パーセントポイント(95% CI 0.2~1.2)であった.対照病院では転帰に変化はみられなかった.
この包括的なチェックリストの導入は,診療水準の高い病院における手術合併症と死亡の減少に関連していた.(Netherlands Trial Register 番号:NTR1943)