November 18, 2010 Vol. 363 No. 21
n–3 系脂肪酸と心筋梗塞後の心血管イベント
n–3 Fatty Acids and Cardiovascular Events after Myocardial Infarction
D. Kromhout, E.J. Giltay, and J.M. Geleijnse
前向きコホート研究や無作為化対照試験の結果によって,心血管疾患に対する n–3 系脂肪酸の防御効果のエビデンスが得られている.われわれは,海産物由来の n–3 系脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA),ドコサヘキサエン酸(DHA)と,植物由来のαリノレン酸(ALA)が,心筋梗塞を発症した患者における心血管イベント発生率に及ぼす影響を検討した.
多施設共同二重盲検プラセボ対照試験において,心筋梗塞を発症し,最先端の降圧,抗血栓,脂質補正治療を受けていた,60~80 歳の患者 4,837 例(男性 78%)を,次の 4 種類の試験用マーガリンのいずれかを 40 ヵ月摂取する群に無作為に割り付けた;EPA–DHA を添加したマーガリン(EPA–DHA の 1 日摂取量 400 mg 増加を目標とする),ALA を添加したマーガリン(ALA の 1 日摂取量 2 g 増加を目標とする),EPA–DHA と ALA を添加したマーガリン,プラセボマーガリン.主要エンドポイントは,致死的・非致死的心血管イベントと心臓に対する介入を含む,主要心血管イベント発生率とした.intention-to-treat の原則に基づき,Cox 比例ハザードモデルを用いてデータを解析した.
患者は平均で 1 日当たり 18.8 g のマーガリンを摂取し,その結果,積極的治療群では,EPA 226 mg・DHA 150 mg,ALA 1.9 g,もしくはその両方の摂取量に増加がみられた.追跡期間中に,主要心血管イベントが 671 例(13.9%)に発生した.EPA–DHA または ALA のいずれによっても,この主要エンドポイントは減少しなかった(EPA–DHA のハザード比 1.01,95%信頼区間 [CI] 0.87~1.17,P=0.93;ALA のハザード比 0.91,95% CI 0.78~1.05,P=0.20).事前に規定された女性サブグループでは,ALA の摂取は,プラセボもしくは EPA–DHA の単独摂取に比べて,主要心血管イベント発生率の低下に関連しており,その関連は有意に近かった(ハザード比 0.73,95% CI 0.51~1.03,P=0.07).有害事象の発生率に群間で有意差は認められなかった.
心筋梗塞を発症し,最先端の降圧,抗血栓,脂質補正治療を受けている患者において,EPA–DHA または ALA を少量補充しても,主要心血管イベント発生率は有意には低下しなかった.(オランダ心臓財団ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00127452)