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August 12, 2010 Vol. 363 No. 7

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透析の早期開始と後期開始を比較した無作為化比較対照試験
A Randomized, Controlled Trial of Early versus Late Initiation of Dialysis

B.A. Cooper and Others

背景

臨床診療では,ステージ 5 の慢性腎臓病患者に対する維持透析の開始時期に相当なばらつきがあるものの,世界的には早期に開始する傾向がある.この研究でわれわれは,オーストラリアとニュージーランドの 32 施設で,維持透析の開始時期が慢性腎臓病患者の生存に影響を及ぼすかどうかを調査した.

方 法

18 歳以上で,推定糸球体濾過量(GFR)が 10.0~15.0 mL/分/1.73 m2 体表面積(コッククロフト・ゴールト式を用いて算出)の進行性慢性腎臓病患者を,推定 GFR が 10.0~14.0 mL/分に下がった時点で透析を開始する群(早期開始群)と,5.0~7.0 mL/分に下がった時点で開始する群(後期開始群)のいずれかに無作為に割り付けた.主要転帰は,全死因死亡とした.

結 果

2000 年 7 月~2008 年 11 月に,計 828 例の成人患者(平均年齢 60.4 歳;男性 542 例,女性 286 例;糖尿病患者 355 例)を無作為化した.透析を開始するまでの期間の中央値は,早期開始群で 1.80 ヵ月(95%信頼区間 [CI] 1.60~2.23),後期開始群で 7.40 ヵ月(95% CI 6.23~8.27)であった.後期開始群の 75.9%では,推定 GFR が指標の 7.0 mL/分を上回っていても,症状が発現したため透析を開始した.追跡期間中央値 3.59 年で,早期開始群 404 例中 152 例(37.6%)と,後期開始群 424 例中 155 例(36.6%)が死亡した(早期開始群のハザード比 1.04,95% CI 0.83~1.30,P=0.75).有害事象(心血管イベント,感染症,透析関連合併症)の発生頻度に両群間で有意差は認められなかった.

結 論

この研究では,ステージ 5 の慢性腎臓病患者における透析の早期開始は,生存率や臨床転帰の改善との関連は認められなかった.(オーストラリア国立保健医療研究審議会ほかから研究助成を受けた.Australian New Zealand Clinical Trials Registry 番号:12609000266268)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2010; 363 : 609 - 19. )