August 12, 2010 Vol. 363 No. 7
劣性栄養障害型表皮水疱症に対する骨髄移植
Bone Marrow Transplantation for Recessive Dystrophic Epidermolysis Bullosa
J.E. Wagner and Others
劣性栄養障害型表皮水疱症は,難治性でしばしば致死的な皮膚粘膜水疱形成疾患であり,VII 型コラーゲン(C7)をコードする遺伝子 COL7A1 の突然変異に起因する.col7-/- マウスにおける生化学的改善と生存期間の延長を示す前臨床データに基づき,われわれは,同種骨髄には劣性栄養障害型表皮水疱症の症状を改善する能力をもつ幹細胞が含まれるという仮説を立てた.
2007 年 10 月~2009 年 8 月に,劣性栄養障害型表皮水疱症の小児 7 例を,免疫骨髄破壊的化学療法と同種幹細胞移植で治療した.免疫蛍光染色法により C7 発現を評価し,透過型電子顕微鏡を用いて係留線維を可視化した.競合的 PCR 法によりキメラ状態を評価し,水疱形成と創傷治癒はデジタル写真で記録した.
1 例が移植前に心筋症で死亡した.残る 6 例のうち,1 例は化学療法レジメンに関連する重度の皮膚毒性を示したが,全例で移植後 30 日から 130 日のあいだに創傷治癒が促進され,水疱形成が減少した.移植を行った 6 例中 5 例で,真皮 - 表皮接合部における C7 沈着の増加が認められたが,係留線維の正常化は認められなかった.5 例は移植後 130~799 日生存し,1 例は移植片拒絶反応と感染症で 183 日目に死亡した.6 例は皮膚にドナー細胞が多数認められたが,検出可能な抗 C7 抗体を有する例はなかった.
劣性栄養障害型表皮水疱症の小児に同種骨髄移植を行った結果,皮膚に C7 沈着の増加とドナー細胞の存在が認められた.この疾患の患者における骨髄移植の長期のリスクと利益を評価するためには,さらなる研究が必要である.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00478244)