セレンと軽度のグレーブス病(バセドウ病)眼症の 経過
Selenium and the Course of Mild Graves' Orbitopathy
C. Marcocci and Others
酸素フリーラジカルとサイトカインは,グレーブス病(バセドウ病)眼症の病因の一端を担っている.
無作為化二重盲検プラセボ対照試験において,軽度のバセドウ病眼症患者 159 例を対象に,セレン(抗酸化薬)とペントキシフィリン(抗炎症薬)の効果を検討した.患者に,セレン(100 μg 1 日 2 回),ペントキシフィリン(600 mg 1 日 2 回),プラセボ(1 日 2 回)のいずれかを 6 ヵ月間経口投与し,投与終了後 6 ヵ月間追跡した.主要転帰は,6 ヵ月の時点での,治療割付けを知らされていない眼科医が行う眼の全般的評価と,患者によるバセドウ病眼症に特異的な QOL 質問票スコアとした.副次的転帰は,臨床的活動性スコアと,複視スコアとした.
6 ヵ月の時点の評価で,プラセボ群と比較して,セレン群では QOL の改善が認められ(P<0.001),眼症状がより少なく(P=0.01),バセドウ病眼症の進行が抑制されたが(P=0.01),これらはペントキシフィリン群では認められなかった.臨床的活動性スコアは全群で低下したが,セレン群における変化は有意に大きかった.12 ヵ月の時点での探索的評価により,6 ヵ月の時点での結果が確認された.プラセボ群の 2 例とペントキシフィリン群の 1 例は,病態の悪化により免疫抑制療法を要した.セレン群では有害事象は認められなかったが,ペントキシフィリン群では高頻度に胃腸症状が認められた.
軽度のバセドウ病眼症患者に対するセレン投与により,QOL の有意な改善が認められ,眼症状が減少し,疾患の進行が抑制された.(ピサ大学,イタリア教育・大学・研究省から研究助成を受けた.EUGOGO Netherlands Trial Register 番号:NTR524)