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February 3, 2011 Vol. 364 No. 5

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NT5E の変異と動脈石灰化
NT5E Mutations and Arterial Calcifications

C. St. Hilaire and Others

背景

動脈石灰化は心血管リスクの上昇と関連することが示されているが,この関連の遺伝学的基盤は明らかにされていない.

方 法

症候性の動脈石灰化を有する患者のいる 3 家族を対象として,臨床研究,放射線学的研究,遺伝学的研究を行った.一塩基多型解析,標的遺伝子の配列決定,定量 PCR,ウェスタンブロッティング,酵素測定,形質導入によるレスキュー実験,in vitro 石灰化実験を行った.

結 果

下肢動脈と手足の関節包に石灰化を認める 9 例を同定した.内訳は,家族 1 の兄弟姉妹全 5 例,家族 2 の姉妹 3 例,家族 3 の 1 例であった.血清中のカルシウム,リン,ビタミン D 濃度は正常であった.家族 1 の罹患例には,第 6 染色体上にホモ接合性の 22.4 Mb の単一の領域が共通して認められ,AMP をアデノシンに変換する CD73 をコードする NT5E にホモ接合性のナンセンス変異(c.662C→A,p.S221X)が認められた.家族 2 の罹患例では,NT5E にホモ接合性のミスセンス変異(c.1073G→A,p.C358Y)が認められた.家族 3 の発端例は,c.662C→A と c.1609dupA(p.V537fsX7)の複合へテロ接合体であった.3 家族にみられた変異はすべて,非機能的な CD73 を生じさせていた.家族 1 の罹患例の培養線維芽細胞では,NT5E mRNA の発現,CD73 蛋白,酵素活性の顕著な低下がみられるとともに,アルカリホスファターゼ値の上昇とリン酸カルシウム結晶の蓄積の増加がみられた.遺伝子のレスキュー実験では,患者細胞の CD73 とアルカリホスファターゼの活性が正常化し,アデノシン処理によりアルカリホスファターゼ値と石灰化の程度が低下した.

結 論

動脈と関節に石灰化の症状を伴う 3 家族の構成員で NT5E の変異が同定された.この遺伝子は AMP をアデノシンに変換する CD73 をコードしていることから,異所性の組織石灰化の抑制にこの代謝経路が果たす役割が裏付けられる.(米国国立ヒトゲノム研究所,米国国立心臓・肺・血液研究所から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2011; 364 : 432 - 42. )