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February 24, 2011 Vol. 364 No. 8

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環境微生物への曝露と小児喘息
Exposure to Environmental Microorganisms and Childhood Asthma

M.J. Ege and Others

背景

伝統的な農場のような,多様な微生物に曝露される環境で育った小児は,小児喘息やアトピーから保護される.先行研究において,微生物曝露のマーカーとこれらの疾患とのあいだに逆相関が認められている.

方 法

2 件の断面研究において,農家で生活している小児と対照群の小児とのあいだで,喘息とアトピーの有病率と,微生物曝露の多様性を比較した.PARSIFAL(アレルギーの予防―農業と人智学的生活様式に関連した小児における感作の危険因子)では,マットレスダストのサンプルを用いて,培養法では測定できない環境細菌を検出するため,一本鎖 DNA 高次構造多型解析により細菌 DNA をスクリーニングした.GABRIELA(欧州共同体における喘息の遺伝的・環境的原因を同定するための集学的研究 [GABRIEL] の先端的研究)では,小児の部屋から採取した沈積ダストのサンプルを用いて,培養法により細菌・真菌分類群を評価した.

結 果

いずれの研究でも,農家で生活している小児は,対照群の小児と比べて,喘息とアトピーの有病率が低く,多様な環境微生物に曝露されていた.また,微生物曝露の多様性は,喘息リスクと逆相関を示した(PARSIFAL におけるオッズ比 0.62,95%信頼区間 [CI] 0.44~0.89,GABRIELA におけるオッズ比 0.86,95% CI 0.75~0.99).さらに,特定の微生物への曝露も喘息リスクと逆相関を示した.その中には,真菌分類群ユーロチウム属の種への曝露(補正オッズ比 0.37,95% CI 0.18~0.76)と,リステリア菌(Listeria monocytogenes),バシラス属の細菌種,コリネバクテリウム属の細菌種などへの曝露(補正オッズ比 0.57,95% CI 0.38~0.86)が含まれた.

結 論

農家で生活している小児は,対照群の小児よりも広範囲の微生物に曝露されており,喘息と農家で育つこととのあいだにみられる逆相関の関係は,大部分がこの曝露によって説明される.(ドイツ研究振興協会,欧州委員会から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2011; 364 : 701 - 9. )