喘息に対するアルブテロールまたはプラセボの投与,偽鍼治療による介入,非介入の比較
Active Albuterol or Placebo, Sham Acupuncture, or No Intervention in Asthma
M.E. Wechsler and Others
喘息患者を対象とした前向き実験研究において,プラセボへの反応が,介入なしで起こる生理的変化の自然経過と異なるかどうかを明らかにすることはむずかしい.われわれは,気管支拡張薬,2 種類のプラセボ介入,非介入が喘息患者の転帰に及ぼす影響を比較した.
二重盲検クロスオーバー予備的研究において,喘息患者 46 例を,アルブテロール(サルブタモール)吸入,プラセボ吸入,偽鍼治療による介入,非介入のいずれかに無作為に割り付けた.ブロックデザインを用いて,連続する 4 回の受診時(3~7 日間隔)を 1 ブロックとし,各受診時にこれらの 4 種類の介入のいずれかを 1 回ずつランダムな順序で行った.この手順をさらに 2 ブロック繰り返した(患者 1 例あたり計 12 回受診).各受診時に,スパイロメトリーを 2 時間のあいだに繰り返し行った.1 秒量(FEV1)の最大値を測定し,患者評価による改善を記録した.
研究を完了した 39 例において,FEV1 はアルブテロールにより 20%増加したのに対し,そのほか 3 種類の介入ではそれぞれ約 7%増加した(P<0.001).しかし,患者評価による介入後の改善には,アルブテロール吸入(50%改善),プラセボ吸入(45%),偽鍼治療(46%)で有意差は認められなかったが,これら 3 種類の介入による主観的改善はすべて,非介入対照における改善(21%)よりも有意に大きかった(P<0.001).
今回検討した喘息患者では,アルブテロールによる FEV1 の改善がみられたが,2 種類のプラセボ介入による改善はみられなかった.しかし,患者評価では,アルブテロールによる利益の増加は認められなかった.喘息患者においては,プラセボ効果は臨床的意義があり,実薬の効果に匹敵する可能性がある.しかし,臨床管理と研究デザインの観点からすると,患者評価は信頼度が低い可能性がある.患者評価による転帰を検討する際には,治療しなかった患者の反応を評価することが不可欠であると考えられる.(米国国立補完代替医療センターから研究助成を受けた.)