November 3, 2011 Vol. 365 No. 18
養子細胞療法のための安全スイッチとしての誘導アポトーシス
Inducible Apoptosis as a Safety Switch for Adoptive Cell Therapy
A. Di Stasi and Others
細胞治療は,有害事象が発現した際に注入細胞を速やかに除去することができれば,癌治療と再生医療に重要な役割を果たすであろう.われわれは,ヒトカスパーゼ 9 を組換えヒト FK 結合蛋白に融合させることで,条件付きの二量体化が可能となる,T 細胞の誘導可能な安全スイッチを考案した.誘導性のカスパーゼ 9(iCasp9)は,合成二量体化薬への曝露により活性化されて,このコンストラクトを発現している細胞は速やかに細胞死を起こす.
ハプロタイプが一致した幹細胞移植レシピエントの免疫再構築を促進させるためのドナー T 細胞にこの遺伝子を導入することにより,この安全スイッチの活性を検証した.移植片対宿主病(GVHD)が発症した場合には,生体投与しなければ生体不活性である低分子の二量体化薬 AP1903 を投与した.GVHD に対する AP1903 の効果と,iCasp9 安全スイッチをもつ細胞の機能と存続に対する AP1903 の効果を測定した.
再発急性白血病に対し幹細胞移植を受けた 3~17 歳の患者 5 例に対し,遺伝子組換え T 細胞を投与した.導入遺伝子は恒常的に発現していたが,5 例すべての末梢血に T 細胞が検出され,その数は経時的に増加した.GVHD が発症した 4 例に対し二量体化薬を単回投与すると,投与後 30 分以内に 90%を超える組換え T 細胞が消失して GVHD は沈静化し,再発はなかった.
iCasp9 を用いた細胞自殺機構により,細胞治療の安全性が高まり,その臨床応用が広がる可能性がある.(米国国立心臓・肺・血液研究所,米国国立がん研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00710892)