November 3, 2011 Vol. 365 No. 18
Clostridium difficile 感染症と保菌に関する 宿主因子と病原菌因子
Host and Pathogen Factors for Clostridium difficile Infection and Colonization
V.G. Loo and Others
Clostridium difficile 感染は医療関連下痢症の主な原因であり,無症候で保菌される場合がある.この研究の目的は,医療関連 C. difficile 感染症および保菌に関連する宿主因子,細菌因子を同定することである.
15 ヵ月の前向き研究をカナダのケベック州とオンタリオ州の 6 病院で行った.人口統計学的患者情報,既知の危険因子,可能性のある交絡因子と,週 1 回の便検体または直腸スワブを収集した.パルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)を用いて C. difficile 分離株の遺伝子型を決定した.C. difficile 毒素 A および B に対する血清抗体値を測定した.
4,143 例を対象とした.医療関連 C. difficile 感染症例は 117 例(2.8%),医療関連 C. difficile 保菌例は 123 例(3.0%)であった.より高齢であることと,抗菌薬・プロトンポンプ阻害薬の使用が,医療関連 C. difficile 感染症と有意に関連していた.直前 2 ヵ月以内における入院,化学療法・プロトンポンプ阻害薬・ H2 遮断薬の使用,毒素 B に対する抗体が,医療関連 C. difficile 保菌と関連していた.医療関連 C. difficile 感染症患者の 62.7%,保菌患者の 36.1%が,北米 PFGE 1 型(NAP1)株を有していた.
この研究において,医療関連 C. difficile 感染症・保菌は,それぞれ異なる宿主因子,病原菌因子と関連していた.C. difficile 感染症患者では NAP1 株が優勢であったが,無症候性保菌患者では他の株を保菌している可能性が高いようであった.(Clostridium difficile 研究コンソーシアムから研究助成を受けた)