November 24, 2011 Vol. 365 No. 21
米国人高齢者における薬剤有害事象による緊急入院
Emergency Hospitalizations for Adverse Drug Events in Older Americans
D.S. Budnitz and Others
薬剤有害事象は高齢者における入院の重要かつ予防可能な原因である.しかし,この集団で入院の原因となった薬剤有害事象に関する,全米を代表するデータは限られている.
全米電子傷害監視システム・共同医薬品有害事象監視プロジェクト(2007~09 年)の有害事象データを用いて,高齢者における薬剤有害事象による救急部受診後の入院頻度および入院率を推定し,国の品質基準により高リスクまたは不適切である可能性が認められた薬剤を含む,特定の薬剤の関与について検討した.
われわれの標本で同定された 5,077 例に基づくと,2007~09 年の 65 歳以上の米国人成人における薬剤有害事象による緊急入院は,毎年 99,628 件(95%信頼区間 [CI] 55,531~143,724)と推定された.これらの入院の半数近く(48.1%,95% CI 44.6~51.6)は 80 歳以上で起こったものであった.入院の 2/3 近く(65.7%,95% CI 60.1~71.3)は意図的でない過剰摂取によるものであった.入院の 67.0%(95% CI 60.0~74.1)において,4 種の薬剤・薬剤クラス,すなわちワルファリン(33.3%),インスリン(13.9%),経口抗血小板薬(13.3%),経口血糖降下薬(10.7%)の単剤使用または併用の関連が示唆された.高リスク薬との関連が示唆された入院はわずか 1.2%(95% CI 0.7~1.7)であった.
確認されている薬剤有害事象による高齢者の緊急入院の多くは,使用頻度の高い数種類の薬剤によるものであり,高リスクまたは不適切とされている薬剤を原因とするものはそれらと比較してわずかであった.抗血栓薬や抗糖尿病薬の管理を改善することで,薬剤有害事象による高齢者の入院を減らすことができる可能性がある.