インドの出生コホートにおけるロタウイルス自然感染の防御効果
Protective Effect of Natural Rotavirus Infection in an Indian Birth Cohort
B.P. Gladstone and Others
ロタウイルスによる胃腸炎で,世界では年間 500,000 人以上が死亡しており,死亡率はインドがもっとも高い.メキシコの出生コホートにおいて,ロタウイルスへの 2 回の自然感染は,その後再感染した際に,中等度~重度の胃腸炎に対する完全な防御免疫を付与することが示されている.われわれは,ロタウイルス感染がその後の感染と疾患にもたらす防御効果を,インド(経口ワクチンの効果が一般的に予想よりも低い)の出生コホートで検討した.
ヴェールールの都市部のスラム地域で,小児を出生時に登録した.対象児の家庭を週 2 回訪問し,生後 3 年間追跡した.便検体の採取を 2 週ごとに,下痢エピソード時には 2 日ごとに行い,酵素免疫測定(ELISA)法とポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて検査した.6 ヵ月ごとに血清検体を採取し,セロコンバージョンを評価した.セロコンバージョンは IgG 抗体価の 4 倍の上昇または IgA 抗体価の 3 倍の上昇と定義した.
登録した児 452 例中,373 例が 3 年間の追跡調査を完了した.ロタウイルス感染は概して生後早期に発生し,58%は生後 6 ヵ月までに感染した.再感染率は高く,同定されたすべての感染のうち,初感染は約 30%のみであった.中等度~重度の疾患に対する防御能は感染回数に従って高まったが,3 回の感染後でも 79%であった.もっとも頻度の高い菌株である G1P [8] については同型免疫は認められなかった.
ウイルスの多様性が高い地域では,早期の感染とその後の複数回の感染による防御能が,ほかの地域で報告されているよりも低かった.この結果は,アジアとアフリカにおけるロタウイルスワクチンの有効性が予想よりも低いことを説明するものである.(Wellcome Trust から研究助成を受けた.)