鎌状赤血球症における肺高血圧症の血行力学的研究
A Hemodynamic Study of Pulmonary Hypertension in Sickle Cell Disease
F. Parent and Others
鎌状赤血球症の成人における肺高血圧症の有病率と特徴は,明確に確立されていない.
前向き研究において,フランスの紹介センターで鎌状赤血球症の外来患者 398 例(平均年齢 34 歳)を評価した.全例にドップラー心エコー検査を行い,三尖弁逆流ジェット速度(tricuspid-valve regurgitant jet velocity)を測定した.三尖弁逆流ジェット速度 2.5 m/sec 以上を基準に肺高血圧症が疑われた 96 例に右心カテーテル検査を行った.平均肺動脈圧 25 mmHg 以上を肺高血圧症と定義した.
三尖弁逆流ジェット速度 2.5 m/sec 以上の有病率は 27%であったのに対し,カテーテル検査により確定された肺高血圧症の有病率は 6%であった.肺高血圧症の検出における心エコー検査の陽性適中率は 25%であった.肺高血圧症の診断が確定した 24 例のうち,11 例で肺毛細血管楔入圧が 15 mmHg 以下(前毛細血管性肺高血圧症を示唆)であった.診断が確定した患者はその他の患者と比較して,年齢が高く,機能的能力が低く,脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体 N 端フラグメント(NT-proBNP)濃度が高かった.一方,三尖弁逆流ジェット速度が 2.5 m/sec 以上で肺高血圧症ではない患者と,三尖弁逆流ジェット速度が 2.5 m/sec 未満の患者の臨床特性は類似していた.
鎌状赤血球症の成人を対象としたこの研究において,右心カテーテル検査により確定された肺高血圧症の有病率は 6%であった.心エコー検査単独での評価では,肺高血圧症の陽性適中率は低かった.(フランス保健省,パリ公立病院協会から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00434902)