分娩時の HIV 感染予防のための 3 種類の産後抗レトロウイルスレジメン
Three Postpartum Antiretroviral Regimens to Prevent Intrapartum HIV Infection
K. Nielsen-Saines and Others
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の発見が遅れたため,出産前に抗レトロウイルス療法(ART)を受けなかった母親から出生した乳児には標準的にジドブジンの予防投与が行われるが,これに抗レトロウイルス薬を追加することの安全性と有効性は明らかにされていない.このような乳児を対象に 3 種類の ART レジメンを検討した.
周産期に HIV 1 型(HIV-1)感染が診断された女性から出生した人工栄養児を,生後 48 時間以内に次の 3 レジメンのいずれかに無作為に割り付けた:ジドブジンを 6 週間投与する群(ジドブジン単独群),ジドブジンを 6 週間投与+生後 8 日間にネビラピンを 3 回投与する群(2 剤群),ジドブジンを 6 週間投与+ネルフィナビルとラミブジンを 2 週間投与する群(3 剤群).主要転帰は,出生時には感染していなかった児における,3 ヵ月時点での HIV-1 感染とした.
南北アメリカと南アフリカで 1,684 例を登録した(ジドブジン単独群 566 例,2 剤群 562 例,3 剤群 556 例).Kaplan-Meier 推定量に基づく全体的な HIV-1 の子宮内伝播率は 5.7%(93 例)であり,群間で有意差はみられなかった.分娩時の伝播は,ジドブジン単独群では 24 例(4.8%,95%信頼区間 [CI] 3.2~7.1)に発生したのに対し,2 剤群では 11 例(2.2%,95% CI 1.2~3.9,P=0.046),3 剤群では 12 例(2.4%,95% CI 1.4~4.3,P=0.046)に発生した.全体的な伝播率は 8.5%(140 例)であり,ジドブジン単独群の伝播率が高かった(2 剤群,3 剤群との比較において P=0.03).多変量解析では,ジドブジン単剤治療,母親のウイルス量が多いこと,母親の違法薬物使用が伝播と有意に関連していた.好中球減少症の発生率は,3 剤群で有意に高かった(他の 2 群との比較において,いずれも P<0.001).
母親が妊娠中に ART を受けなかった新生児では,分娩時の HIV 伝播予防として,2 剤または 3 剤の ART レジメンのほうがジドブジン単独投与よりも優れていた.また,2 剤レジメンのほうが 3 剤レジメンよりも毒性が低かった.(ユニス・ケネディ・シュライバー米国国立小児保健発達研究所 [NICHD] ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00099359)