クッシング病に対するパシレオチドの 12 ヵ月間の第 3 相試験
A 12-Month Phase 3 Study of Pasireotide in Cushing's Disease
A. Colao and Others
クッシング病は高い障害発生率と死亡率に関連している.治療薬として可能性があるパシレオチド(pasireotide)は,独特で広範なソマトスタチン受容体結合プロファイルを有し,ソマトスタチン受容体サブタイプ 5 に対する結合親和性が高い.
二重盲検第 3 相試験において,クッシング病の成人患者で,尿中コルチゾール値が正常範囲上限の 1.5 倍以上である 162 例を,パシレオチド 600 μg を 1 日 2 回皮下投与する群(82 例)と,900 μg を同様に投与する群(80 例)に無作為に割り付けた.3 ヵ月時点で,尿中コルチゾール値が正常範囲上限の 2 倍を超えておらず,またベースライン値を超えていない患者には,無作為に割り付けた用量を継続した.それ以外の患者には 1 日 2 回の投与量を 300 μg 増量した.主要エンドポイントは,投与量を増量することなく,6 ヵ月時点での尿中コルチゾール値が正常範囲の上限以下であることとした.非盲検投与は 12 ヵ月まで継続した.
600 μg 群の 82 例中 12 例と,900 μg 群の 80 例中 21 例が主要エンドポイントに達した.尿中コルチゾール値の中央値は,両群とも 2 ヵ月までに約 50%低下し,その後安定した.尿中コルチゾール値が正常値に達した患者の割合は,ベースライン値が正常範囲上限の 5 倍を超えない患者のほうが,超えていた患者よりも多かった.血清中および唾液中コルチゾールと血漿中コルチコトロピンの値が低下し,クッシング病の臨床的徴候および症状が減弱した.パシレオチドは,162 例中 118 例にみられた高血糖関連有害事象と関連していたが,その他の有害事象は他のソマトスタチンアナログに関連する有害事象と同様であった.コルチゾール値は低下したにもかかわらず,血糖値と糖化ヘモグロビン値は治療開始後すぐに上昇し,その後安定した.血糖降下療法が 162 例中 74 例で開始された.
パシレオチドを投与されたクッシング病患者のコルチゾール値が有意に低下したことから,パシレオチドのコルチコトロピン産生下垂体腺腫に対する標的治療薬としての可能性が支持される.(Novartis Pharma 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00434148)