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November 8, 2012 Vol. 367 No. 19

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HER2 陽性進行乳癌に対するトラスツズマブエムタンシン
Trastuzumab Emtansine for HER2-Positive Advanced Breast Cancer

S. Verma and Others

背景

トラスツズマブエムタンシン(trastuzumab emtansine)(T-DM1)は,トラスツズマブのヒト上皮増殖因子受容体 2(HER2)を標的とする抗腫瘍特性と,微小管阻害薬 DM1 の細胞傷害活性とを組み合わせた,抗体-薬物複合体である.この抗体と細胞傷害薬は,安定したリンカーで結合されている.

方 法

トラスツズマブとタキサン系薬剤による治療歴のある HER2 陽性進行乳癌患者を,T-DM1 群とラパチニブ+カペシタビン群に無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,無増悪生存期間(独立した審査委員会が評価),全生存期間,安全性とした.副次的エンドポイントは,無増悪生存期間(試験担当医師が評価),客観的奏効率,症状増悪までの期間などとした.全生存期間の中間解析は 2 回行った.

結 果

無作為に割り付けられた 991 例において,独立した審査委員会が評価した無増悪生存期間中央値は,T-DM1 群で 9.6 ヵ月であったのに対し,ラパチニブ+カペシタビン群では 6.4 ヵ月で(増悪または全死因死亡のハザード比 0.65,95%信頼区間 [CI] 0.55~0.77,P<0.001),2 回目の中間解析における全生存期間中央値は,有効性の中止基準を超えた(30.9 ヵ月 対 25.1 ヵ月,全死因死亡のハザード比 0.68,95% CI 0.55~0.85,P<0.001).客観的奏効率は T-DM1 群のほうが高く(43.6% 対 ラパチニブ+カペシタビン群 30.8%,P<0.001),その他の副次的エンドポイントもすべて,T-DM1 群のほうが良好であった.グレード 3 または 4 の有害事象の発生率は,ラパチニブ+カペシタビン群のほうが T-DM1 群よりも高かった(57% 対 41%).血小板減少症と血清アミノトランスフェラーゼ値上昇の発現率は T-DM1 群のほうが高かったのに対し,下痢,悪心,嘔吐,手掌・足底発赤知覚不全の発生率はラパチニブ+カペシタビン群のほうが高かった.

結 論

トラスツズマブとタキサン系薬剤による治療歴のある HER2 陽性進行乳癌患者において,T-DM1 は,ラパチニブ+カペシタビンと比較して無増悪生存期間と全生存期間を有意に延長させ,毒性は低かった.(F. Hoffmann-La Roche/Genentech 社から研究助成を受けた.EMILIA ClinicalTrials.gov 番号:NCT00829166)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 367 : 1783 - 91. )