November 8, 2012 Vol. 367 No. 19
イングランドにおける病院の pay for performance による死亡率低下
Reduced Mortality with Hospital Pay for Performance in England
M. Sutton and Others
pay-for-performance(医療の質に対する支払い)プログラムは,患者転帰を改善させるというエビデンスがほとんどないにもかかわらず,国際的に採用されている.2008 年,イングランド北西部(人口 680 万人)のすべての国民保健サービス(NHS)病院において,米国の病院品質インセンティブデモンストレーションをもとにした,「質の向上」と呼ばれるプログラムが導入された.
pay-for-performance プログラムが採用されている 24 の病院に,肺炎,心不全,急性心筋梗塞のいずれかにより入院した 134,435 例における 30 日院内死亡率を解析した.difference-in-differences 回帰分析を用いて,プログラム導入前 18 ヵ月と導入後 18 ヵ月の死亡率を,以下の 2 つの対照群における死亡率と比較した:イングランドの他の 132 病院に同じ 3 疾患により入院した 722,139 例と,両グループの病院に異なる 6 疾患により入院した 241,009 例.
pay-for-performance プログラムの対象疾患について,リスク補正後の絶対死亡率は有意に低下し,絶対的低下は 1.3 パーセントポイント(95%信頼区間 [CI] 0.4~2.1,P=0.006),相対的低下は 6%であり,これは 18 ヵ月間で死亡が 890 例(95% CI 260~1,500)少ないことに相当した.肺炎における低下がもっとも大きく,有意であった(1.9 パーセントポイント,95% CI 0.9~3.0,P<0.001).急性心筋梗塞(0.6 パーセントポイント,95% CI -0.4~1.7,P=0.23)と心不全(0.6 パーセントポイント,95% CI -0.6~1.8,P=0.30)については,低下は有意ではなかった.
イングランドの一地域におけるすべての NHS 病院で pay for performance を導入したことに関連して,死亡率に臨床的に有意な低下が認められた.米国の同様のプログラムと比較して,英国のプログラムはボーナスの額が大きく,質の向上活動に対する病院の投資額が大きかった.pay-for-performance プログラムの導入が,その効果にどのような影響を及ぼすのかについて,さらなる研究が必要である.(英国 NHS 国立健康研究所から研究助成を受けた.)