December 6, 2012 Vol. 367 No. 23
2011 年のミズーリ州ジョプリンにおける竜巻後の壊死性皮膚ムコール症
Necrotizing Cutaneous Mucormycosis after a Tornado in Joplin, Missouri, in 2011
R. Neblett Fanfair and Others
ムコール症は,環境から獲得された糸状菌による真菌感染症である.われわれは,2011 年 5 月 22 日にミズーリ州ジョプリンで発生した竜巻で負傷した人における皮膚ムコール症の症例群について検討した.
症例は,竜巻発生時に負傷した人における軟部組織感染で,培養または免疫組織化学検査と DNA 配列決定によって,ムコール菌(mucormycete)が確認されたものと定義した.診療録の再検討と,症例患者および対照入院患者への面接に基づく,症例対照研究を行った.臨床試料を用いて,種を同定するための DNA 配列決定と,株レベルでの違いを評価するための全ゲノム配列決定を行った.
症例患者は 13 例同定され,うち 5 例(38%)が死亡した.患者の創傷数は中央値で 5 ヵ所(1~7 ヵ所)で,11 例(85%)は 1 ヵ所以上の骨折,9 例(69%)は鈍的外傷,5 例(38%)は穿通性外傷を負っていた.症例患者はすべて,竜巻によってもっとも甚大な被害を受けた地域にいた.多変量解析では,感染症は穿通性外傷(対照に対する症例患者の補正オッズ比 8.8,95%信頼区間 [CI] 1.1~69.2)と,創傷数が多いこと(1 ヵ所増えるごとの補正オッズ比 2.0,95% CI 1.2~3.2)と関連していた.28S リボソーム DNA の D1/D2 領域の配列決定により,症例患者 13 例すべてで Apophysomyces trapeziformis が検出された.全ゲノム配列決定により,Apophysomyces 属の分離株には 4 つの異なる株があることが示された.
ジョプリンを襲った竜巻の生存者における,相当数の合併症と死亡に関連した皮膚ムコール症の症例群について報告した.自然災害後の壊死性軟部組織感染症の原因として,真菌に対する意識を高める必要がある.