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August 30, 2012 Vol. 367 No. 9

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ドナーの活性化 KIR2DS1 による白血病再発の HLA-C 依存的な予防
HLA-C–Dependent Prevention of Leukemia Relapse by Donor Activating KIR2DS1

J.M. Venstrom and Others

背景

急性骨髄性白血病(AML)は,同種造血幹細胞移植(HSCT)によって治療される癌のなかでナチュラルキラー(NK)細胞の反応性に対する感受性がもっとも高い.活性化キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)2DS1 は,HLA-C2 抗原に対するリガンド特異性を有し,NK 細胞を HLA 依存的に活性化させる.KIR2DS1 と HLA によって制御されるドナー由来の NK 反応性は,同種 HSCT を受ける AML 患者に有益な効果をもたらす可能性がある.

方 法

HLA-AHLA-BHLA-CHLA-DRHLA-DQ 適合の非血縁ドナーまたはアレルのいずれか 1 つが不適合の非血縁ドナーから造血幹細胞の移植を受けた AML 患者 1,277 例を対象に,臨床データ,HLA 遺伝子型決定の結果,ドナー細胞株またはゲノム DNA を評価した.ドナーの KIR 遺伝子型決定を行い,ドナーの KIR 遺伝子型と,ドナーおよびレシピエントの HLA 遺伝子型による臨床的影響を評価した.

結 果

KIR2DS1 陽性のドナーから移植を受けた AML 患者では,KIR2DS1 陰性のドナーから移植を受けた AML 患者よりも再発率が低かった(26.5% 対 32.5%,ハザード比 0.76,95%信頼区間 [CI] 0.61~0.96,P=0.02).KIR2DS1 陽性ドナーの造血幹細胞のうち,HLA-C1 抗原のホモ接合体またはヘテロ接合体をもつドナーの造血幹細胞がこの抗白血病効果に介在した可能性がある一方,HLA-C2 のホモ接合体をもつドナーの造血幹細胞には利益は認められなかった(HLA-C1 ホモ接合またはヘテロ接合 24.9% 対 HLA-C2 ホモ接合 37.3%,ハザード比 0.46,95% CI 0.28~0.75,P=0.002).単一の HLA-C 遺伝子座に不適合がある KIR2DS1 陽性造血幹細胞を移植されたレシピエントでは,同遺伝子座に不適合がある KIR2DS1 陰性造血幹細胞を移植されたレシピエントよりも再発率が低かった(17.1% 対 35.6%,ハザード比 0.40,95% CI 0.20~0.78,P=0.007).KIR2DS1 と正の遺伝子連鎖不平衡にある KIR3DS1 には,白血病の再発に対する効果は認められなかったが,死亡率の低下との関連が認められた(60.1% 対 KIR3DS1 陰性 66.9%,ハザード比 0.83,95% CI 0.71~0.96,P=0.01).

結 論

ドナー由来の活性化 KIR 遺伝子は,AML に対する同種 HSCT での異なる転帰に関連した.ドナーの KIR2DS1HLA-C 依存的に再発を予防すると考えられ,ドナーの KIR3DS1 は死亡率の低下に関連した.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 367 : 805 - 16. )