August 30, 2012 Vol. 367 No. 9
ラクナ梗塞を最近発症した患者に対するアスピリンへのクロピドグレル併用効果
Effects of Clopidogrel Added to Aspirin in Patients with Recent Lacunar Stroke
The SPS3 Investigators
ラクナ梗塞は,主に脳小血管病変に起因する,頻度の高い脳卒中の一つである.二次予防のための抗血小板療法の有効性は明らかになっていない.
MRI にて症候性のラクナ梗塞を最近発症したことが確認された患者 3,020 例を対象に,二重盲検多施設共同試験を行った.患者を,クロピドグレル 75 mg 連日投与群とプラセボ連日投与群に無作為に割り付けた.両群にアスピリン 325 mg を連日投与した.主要転帰は,脳梗塞と頭蓋内出血を含む,すべての脳卒中の再発とした.
患者の平均年齢は 63 歳で,63%が男性であった.3.4 年の平均追跡期間後,脳卒中の再発リスクは,アスピリンとクロピドグレルの併用(抗血小板薬 2 剤併用療法)(125 件,年間発生率 2.5%)では,アスピリン単独(138 件,年間発生率 2.7%)と比較して有意な減少は認められず(ハザード比 0.92,95%信頼区間 [CI] 0.72~1.16),また,脳梗塞の再発リスク(ハザード比 0.82,95% CI 0.63~1.09)や,障害の残る脳卒中または致死的脳卒中(ハザード比 1.06,95% CI 0.69~1.64)にも有意な減少は認められなかった.重大な出血のリスクは,抗血小板薬 2 剤併用療法(105 件,年間発生率 2.1%)で,アスピリン単独(56 件,年間発生率 1.1%)のほぼ 2 倍であった(ハザード比 1.97,95% CI 1.41~2.71,P<0.001).分類可能な脳梗塞の再発のうち,71%(187 例中 133 例)がラクナ梗塞であった.全死因死亡は,抗血小板薬 2 剤併用療法群の患者で増加し(アスピリン単独群 77 例 対 抗血小板薬 2 剤併用療法群 113 例)(ハザード比 1.52,95% CI 1.14~2.04,P=0.004),この差は,致死的出血(抗血小板薬 2 剤併用療法群 9 例 対 アスピリン単独群 4 例)では説明されなかった.
ラクナ梗塞を最近発症した患者において,アスピリンにクロピドグレルを併用しても,脳卒中の再発リスクは有意に減少せず,出血と死亡のリスクが有意に増加した.(米国国立神経疾患・脳卒中研究所ほかから研究助成を受けた.SPS3 ClinicalTrials.gov 番号:NCT00059306)