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May 16, 2013 Vol. 368 No. 20

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新型トリインフルエンザ A(H7N9)ウイルスのヒト感染
Human Infection with a Novel Avian-Origin Influenza A (H7N9) Virus

R. Gao and Others

背景

インフルエンザ A サブタイプ H7 ウイルスの家禽への感染は世界中で発生しているが,アジアではヒトへの感染はこれまで観察されていない.2013 年 3 月,中国の上海と安徽省の都市部居住者 3 例が急速に進行する下気道感染で受診し,新型の遺伝子再集合体トリインフルエンザ A(H7N9)ウイルスに感染していることが判明した.

方 法

これらの患者から臨床データ,疫学データ,ウイルス学的データを入手し分析した.リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR),ウイルス培養,塩基配列解析を用いて,呼吸器検体のインフルエンザウイルスとその他の呼吸器ウイルスの検査を行った.

結 果

新型の遺伝子再集合体トリインフルエンザ A(H7N9)ウイルスが,3 例全例の呼吸器検体から分離され,H7N9 型として同定された.塩基配列解析により,3 例のウイルスの遺伝子はすべてトリインフルエンザ A(H9N2)ウイルスの内部遺伝子 6 個を有しており,トリ由来であることが示された.A/Anhui/1/2013 ウイルスと A/Shanghai/2/2013 ウイルスには,赤血球凝集素(HA)遺伝子の 210 番目のループに Q226L 置換(H3 番号付け)が認められたが,A/Shanghai/1/2013 ウイルスには認められなかった.ウイルス 3 株すべてに HA 遺伝子の 150 番目のループに T160A 変異が認められた.ノイラミニダーゼ(NA)のストーク領域におけるアミノ酸 5 個の欠失がウイルス 3 株すべてで認められた.3 例全例が受診時に発熱,咳嗽,呼吸困難を呈していた.このうち 2 例は,家禽への最近の曝露歴があった.胸部画像ではびまん性陰影と浸潤影が認められた.急性呼吸促迫症候群,多臓器不全などの合併症があり,3 例全例が死亡した.

結 論

新型の遺伝子再集合体 H7N9 ウイルスは,患者 3 例において重度かつ致死的な呼吸器疾患と関連していた.(中国国家重点基礎研究発展計画ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2013; 368 : 1888 - 97. )