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June 13, 2013 Vol. 368 No. 24

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急性細気管支炎に対するラセミ体アドレナリンと吸入戦略
Racemic Adrenaline and Inhalation Strategies in Acute Bronchiolitis

H.O. Skjerven and Others

背景

乳児の急性細気管支炎は入院にいたることが多いが,有用となる可能性のある吸入療法については,薬剤の種類にも投与の頻度にも,確立したコンセンサスがない.この試験の目的は,急性細気管支炎で入院した乳児において,ラセミ体アドレナリン吸入の有効性を食塩水吸入と比較評価するほか,吸入頻度に関する戦略(必要に応じて 対 固定スケジュール)を検討することである.

方 法

2×2 要因デザインを用いた 8 施設共同無作為化二重盲検試験において,中等症~重症の急性細気管支炎の乳児(生後 12 ヵ月未満)を対象に,ラセミ体アドレナリン吸入と食塩水吸入との比較と,必要に応じての吸入と固定スケジュールでの吸入(最高で 2 時間ごと)との比較を行った.対象の要件は,総合臨床スコア 4 以上(スコアは 0~10,高いほど重症であることを示す)とした.酸素療法,経鼻胃管栄養,換気補助を行った場合,すべて記録した.主要転帰は入院期間とし,解析は intention-to-treat の原則に従って行った.

結 果

対象となった乳児 404 例の平均月齢は 4.2 ヵ月で,59.4%が男児であった.入院期間,酸素補給の使用,経鼻胃管栄養,換気補助,臨床スコアのベースライン(吸入前)からの相対的改善は,ラセミ体アドレナリン吸入群と食塩水吸入群とで同程度であった(すべての比較について P>0.1).必要に応じての吸入は,固定スケジュールでの吸入と比較して,推定平均入院期間の有意な短縮に関連し,47.6 時間(95%信頼区間 [CI] 30.6~64.6) 対 61.3 時間(95% CI 45.4~77.2,P=0.01)であった.同様に,酸素補給の使用頻度が低いこと(使用した乳児の割合 38.3% 対 48.7%,P=0.04),換気補助の施行頻度が低いこと(4.0% 対 10.8%,P=0.01),吸入投与回数が少ないこと(12.0 対 17.0,P<0.001)にも関連した.

結 論

乳児の急性細気管支炎の治療において,ラセミ体アドレナリン吸入は,食塩水吸入よりも有効ではない.一方,必要に応じて吸入を行う戦略は,固定スケジュールで吸入を行う戦略よりも優れていると考えられる.(メディシンフォーチルドレンから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00817466,EudraCT 番号:2009-012667-34)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2013; 368 : 2286 - 93. )