体肺動脈シャントを有する乳児に対するクロピドグレル
Clopidogrel in Infants with Systemic-to-Pulmonary-Artery Shunts
D.L. Wessel and Others
チアノーゼを伴う先天性心疾患で,体肺動脈シャントの設置によって症状の軽減をみている乳児には,シャント血栓症と死亡のリスクがある.われわれは,標準療法にクロピドグレルを追加することで,全死因死亡とシャントに関連する合併症が減少するかどうかを検討した.
多施設共同二重盲検イベント主導型試験において,チアノーゼを伴う先天性心疾患があり,体肺動脈シャントを設置された生後 92 日以内の乳児を,標準療法(87.9%の患児でアスピリン)に加えて,クロピドグレル 0.2 mg/kg 体重/日を投与する群(467 例)と,プラセボを投与する群(439 例)に無作為に割り付けた.主要有効性エンドポイントは,死亡または心臓移植,シャント血栓症,生後 120 日までに施行された,本質的に血栓性と判定されたイベントに対する心臓手技の複合とした.
主要複合エンドポイントの発生率は,クロピドグレル群(19.1%)とプラセボ群(20.5%)とのあいだで有意差は認められず(絶対リスク差 1.4 パーセントポイント,クロピドグレルによる相対リスク減少 11.1%,95%信頼区間 -19.2~33.6,P=0.43),主要複合エンドポイントを構成する 3 つの項目の発生率にも有意差は認められなかった.シャント術の種類で定義したサブグループを含むいかなるサブグループにおいても,クロピドグレル治療の有意な利益は認められなかった.クロピドグレル投与例とプラセボ投与例とで,出血全体の発生率(それぞれ 18.8%,20.2%),重度の出血の発生率(それぞれ 4.1%,3.4%)は同程度であった.
チアノーゼを伴う先天性心疾患で,体肺動脈シャントによって症状の軽減をみている乳児は,ほとんどがアスピリン療法を同時に受けているが,クロピドグレル療法を併用しても全死因死亡とシャントに関連する合併症は減少しなかった.(Sanofi-Aventis 社,Bristol-Myers Squibb 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00396877)