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January 17, 2013 Vol. 368 No. 3

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手術危機チェックリストのシミュレーション試験
Simulation-Based Trial of Surgical-Crisis Checklists

A.F. Arriaga and Others

背景

手術室で発生する危機(心停止,大量出血など)は,大規模病院では頻度の高い事象であるが,個々の医師にとってはまれである可能性がある.管理は困難かつ複雑である.われわれは,このような事象が発生した際に,根拠に基づく最良の対応の遵守を向上させるためのツールの評価を試みた.

方 法

3 施設(大学付属医療センター 1 施設と地域病院 2 施設)の手術室チームが,模擬手術室における手術危機の一連のシミュレーションに参加した.各チームは,シナリオの半分をチェックリストに基づいて管理し,残りの半分は何も見ずに管理するように無作為に割り付けた.主要評価項目は,ケアの最重要プロセスを遵守できないこととした.参加者には,チェックリストの有用性と臨床的意義についての印象に関する調査も行った.

結 果

17 の手術室チームが,106 件の手術危機シナリオシミュレーションに参加した.救命プロセスへの遵守失敗は,チェックリストが利用可能なシミュレーション中のほうが少なかった(行われなかったステップは,チェックリストが利用可能な場合は 6%であったのに対し,利用可能でない場合は 23%,P<0.001).結果は,チーム内でのクラスタリングを考慮した多変量モデルにおいて,施設,シナリオ,学習・疲労効果で補正後も同様であった(補正相対リスク 0.28,95%信頼区間 0.18~0.42,P<0.001).いずれのチームも,危機チェックリストが利用可能な場合のほうが,利用可能でない場合よりも成績がよかった.参加者の 97%が,自分が手術中にこれらの危機が発生した場合,今回用いられたチェックリストが欲しいと報告した.

結 論

忠実性の高いシミュレーション研究において,チェックリストの使用は,手術室で発生する危機の管理における有意な改善と関連していた.今回の結果は,手術室で危機が発生した際に使用するためのチェックリストは,外科的治療を向上させる可能性があることを示唆している.(米国医療研究品質局から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2013; 368 : 246 - 53. )