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October 31, 2013 Vol. 369 No. 18

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HIV 血清陽性者・陰性者カップルにおける予防としての HIV 治療の費用対効果
Cost-Effectiveness of HIV Treatment as Prevention in Serodiscordant Couples

R.P. Walensky and Others

背景

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)血清陽性者・陰性者カップルの,HIV 感染パートナーに対する早期抗レトロウイルス療法(ART)の費用対効果は,明らかにされていない.HIV 感染進行のコンピュータシミュレーションと,HIV 予防試験ネットワーク 052 研究のデータを用いて,そのような感染パートナーに対する早期 ART の費用対効果を算出した.

方 法

南アフリカとインドにおいて,HIV 血清陽性者・陰性者カップルの HIV 感染パートナーを対象に,ART の早期開始と待期的 ART とを比較した.5 年間,および生涯の評価項目は,累積 HIV 伝播率,生存年数,費用,費用対効果などとした.早期 ART について,増分費用対効果比が年間の 1 人あたりの国内総生産(GDP)(南アフリカ 8,100 ドル,インド 1,500 ドル)を下回った場合には「費用対効果がきわめて高い」とし,同比が GDP の 3 倍を下回った場合には「費用対効果が高い」とし,待期的 ART と比較して総費用が減少し,生存年数が増加した場合には「費用節約的」とした.

結 果

南アフリカでは,早期 ART は 5 年間は日和見疾患を予防し,費用節約的であった.生涯を通じてみると費用対効果がきわめて高かった(生存延長 1 年あたり 590 ドル).インドでは,早期 ART は 5 年間は費用対効果が高く(生存延長 1 年あたり 1,800 ドル),生涯を通じてみると費用対効果がきわめて高かった(生存延長 1 年あたり 530 ドル).両国とも早期 ART により短期間の HIV 伝播が予防されたが,生存期間の延長とともにこの効果は減弱した.生存年が延長された要因は,治療を受けた患者にもたらされる臨床的利益であった.これら 2 つの国において,早期 ART は,モデル化したほとんどの仮定のもと,生涯を通じてきわめて高い費用対効果が維持された.

結 論

南アフリカでは,早期 ART は 5 年間は費用節約的であった.南アフリカとインドの両国において,早期 ART は生涯を通じて費用対効果がきわめて高いと算出された.個人の利益,公衆衛生上の利益,経済的利益とともに,医療資源の限られた環境での HIV 血清陽性者・陰性者カップルに対する早期 ART を支持する,説得力のある例が示された.(米国国立アレルギー感染症研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2013; 369 : 1715 - 25. )