November 28, 2013 Vol. 369 No. 22
クッシング症候群を伴う副腎皮質大結節性過形成における ARMC5 変異
ARMC5 Mutations in Macronodular Adrenal Hyperplasia with Cushing's Syndrome
G. Assié and Others
コルチコトロピン非依存性副腎皮質大結節性過形成は,偶然発見される場合もあれば,クッシング症候群の評価中に同定される場合もある.家族性症例や,両側副腎に認められることが報告されていることから,遺伝性であることが示唆される.
コルチコトロピン非依存性副腎皮質大結節性過形成の患者 33 例(30~73 歳の男性 12 例と女性 21 例)から得た血液および腫瘍の DNA において,一塩基多型アレイ,マイクロサテライトマーカー,全ゲノムおよびサンガー法による配列決定を用いて遺伝子型を決定した.培養細胞モデルにおいて,アルマジロリピート含有 5(ARMC5)の不活性化と過剰発現の影響を検討した.
頻度がもっとも高かった体細胞染色体の変化は,16p におけるヘテロ接合性の消失であった(データを入手しえた 33 例中 8 例 [24%]).全ゲノム配列決定を用いて同定された変異で頻度がもっとも高かったのは,16p11.2 に位置する ARMC5 の変異であった.ARMC5 変異は,33 例中 18 例(55%)の腫瘍で検出された.全例で ARMC5 の両アレルに変異が認められ,一方が生殖細胞系列変異,もう一方が体細胞変異であった.生殖細胞系列の ARMC5 変異を有する 4 例では,罹患した副腎の別の結節に,異なる二次的な ARMC5 変化が存在した.トランスクリプトームに基づくコルチコトロピン非依存性副腎皮質大結節性過形成の分類では,ARMC5 変異を有する全例が 1 つに集まったことから,ARMC5 変異は遺伝子発現に影響を及ぼすことが示された.ARMC5 の不活性化によって in vitro でステロイド産生が低下し,ARMC5 の過剰発現によって細胞の生存が変化した.
コルチコトロピン非依存性副腎皮質大結節性過形成の症例の一部は遺伝性と考えられ,腫瘍抑制遺伝子と推定される ARMC5 の不活性化変異を伴う場合が多い.診断前に長く潜行性の経過をたどることが多いこの疾患は,遺伝子検査によってより早期に発見され,良好に管理できる可能性がある.(フランス国立研究機構ほかから研究助成を受けた.)