The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

July 25, 2013 Vol. 369 No. 4

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

アルツハイマー病の治療のためのセマガセスタットの第 3 相試験
A Phase 3 Trial of Semagacestat for Treatment of Alzheimer's Disease

R.S. Doody and Others

背景

アルツハイマー病は大脳皮質に存在するアミロイド β(Aβ)蛋白質の斑を特徴とし,これは β-セクレターゼと γ-セクレターゼがアミロイド前駆体蛋白に連続的に作用することによって生成される.セマガセスタット(semagacestat)は,アルツハイマー病の治療薬の候補として開発された低分子 γ-セクレターゼ阻害薬である.

方 法

二重盲検プラセボ対照試験において,アルツハイマー病の可能性がある患者 1,537 例を,1 日 1 回,セマガセスタット 100 mg を投与する群,セマガセスタット 140 mg を投与する群,プラセボを投与する群のいずれかに無作為に割り付けた.ベースラインから 76 週目までの認知機能の変化を,アルツハイマー病評価尺度の,認知機能に関する下位尺度(ADAS-cog)を用いて評価した.この尺度の範囲は 0~70 で,スコアが高いほど認知機能障害が高度であることを示す.また日常生活機能の変化を,アルツハイマー病共同研究の日常生活動作評価(ADCS-ADL)尺度を用いて評価した.この尺度の範囲は 0~78 で,スコアが高いほど機能が良好であることを示す.混合モデルの反復測定分析を用いた.

結 果

この試験は,データ・安全性モニタリング委員会の勧告に基づき,完了前に中止された.試験を中止した時点で,プラセボ群 189 例,セマガセスタット 100 mg 群 153 例,セマガセスタット 140 mg 群 121 例が投与を受けていた.ADAS-cog スコアは 3 群すべてで悪化した(平均変化:プラセボ群 6.4 ポイント,セマガセスタット 100 mg 群 7.5 ポイント,セマガセスタット 140 mg 群 7.8 ポイント;プラセボとの比較はそれぞれ P=0.15,P=0.07).ADCS-ADL スコアもすべての群で悪化した(76 週目における平均変化:プラセボ群 -9.0 ポイント,セマガセスタット 100 mg 群 -10.5 ポイント,セマガセスタット 140 mg 群 -12.6 ポイント;プラセボとの比較はそれぞれ P=0.14,P<0.001).セマガセスタットの投与を受けた患者では,体重減少が大きく,皮膚癌,感染症,有害事象による投与中止,重篤な有害事象が多かった(プラセボとのすべての比較について P<0.001).臨床検査値の異常として,リンパ球,T 細胞,免疫グロブリン,アルブミン,総蛋白,尿酸の各値の低下,および好酸球,単球,コレステロールの各値の上昇などが認められた.尿の pH も上昇した.

結 論

プラセボと比較して,セマガセスタットによる認知機能状態の改善はみられず,高用量のセマガセスタット投与を受けた患者では日常生活機能が有意に悪化した.セマガセスタットは,皮膚癌,感染症などの有害事象がより多いことと関連していた.(Eli Lilly 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00594568)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2013; 369 : 341 - 50. )